70万年前の地層から発見されたフローレス原人の大人の上腕骨化石(骨の下半分が残存)=東京大学の海部陽介教授提供

東京大学の海部陽介教授らの国際研究チームはインドネシアのフローレス島で、世界最小サイズの人類の化石を発見した。70万年前の地層から原人の大人の上腕骨が見つかり、推定身長は約100センチメートルと分析した。同島で暮らしていた原人は70万年前には既に小柄な体格だったことが判明した。

聖マリアンナ医科大学の水嶋崇一郎主任教授や新潟医療福祉大学の沢田純明教授とインドネシア、オーストラリア、米国の国際共同研究の成果で、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。

これまでに、インドネシアのジャワ島の東にあるフローレス島では、洞窟の約6万年前の地層から非常に小柄な人類「フローレス原人」の化石が見つかり、2004年に報告された。海で隔てられていた孤島で太古に人類が暮らし、小さく進化したことは大きな発見だったが、進化の過程は謎に包まれていた。

インドネシアのフローレス島ソア盆地にある化石発掘地「マタメンゲ」(2013年の調査時)=東大の海部教授提供

研究チームは同島ソア盆地にある70万年前の地層で新たに見つかった小さな上腕骨(下半分)や歯の化石を詳細に解析した。骨は子どもから大人に成長する過程で微細構造が変化する。上腕骨化石の微細構造をデジタル顕微鏡で観察した結果、大人の骨だと分かった。歯の形状から古いタイプのフローレス原人とみている。

さらに、下半分しか残っていない上腕骨の長さから原人の身長を推定することにも成功した。化石の細かな形状から統計学的に上腕骨全体の長さを復元し、上腕骨の長さと身長の比率の分析モデルから身長約100センチと推定した。04年に初めて報告されたフローレス原人の推定身長106センチを下回り、世界最小サイズとなった。

新たに見つかった70万年前のフローレス原人の上腕骨(左)は6万年前の同原人より小さい=東大の海部教授提供

フローレス原人はジャワ原人とよく似ている。現代人並みに大柄だったジャワ原人が約100万年前にフローレス島に渡り、劇的に小さく進化したようだ。今回見つかった上腕骨の分析から、フローレス原人は70万年前には既に小柄になっていたと考えられる。海部教授は「島では動物の体の大きさが劇的に変化することがあるが、人類がここまで小さくなるのは驚きだ」と話す。

記者会見した東大の海部教授(中央)と聖マリアンナ医科大の水嶋主任教授(左)、新潟医療福祉大の沢田教授(東京・千代田)

フローレス原人の新発見の化石(模型)は、インターメディアテク(東京・千代田)で開催中の特別展示「海の人類史」で7日から展示公開される。

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