新種のゴカイ㊧はウミウシ㊨に擬態している=名古屋大学提供

名古屋大学などの研究チームは、ウミウシに姿形がそっくりな新種のゴカイを発見した。天敵の小魚や甲殻類などから逃れるため毒を持つウミウシに擬態しているとみている。鮮やかな見た目から「化粧」、擬態していることから「化生」の意味を掛け合わせて和名は「ケショウシリス」と名付けた。三重県と和歌山県、ベトナムで見つかった。

ゴカイの仲間は世界で約1万5000種、日本では約1700種が知られている。川や海などに広く生息しており、釣りの餌としてもよく使われる。今回見つかったゴカイは大きさ5〜6ミリメートルで、サンゴの仲間であるウミトサカの中に共生している。その周辺を調べると、そっくりな姿形をしているウミウシが生息していた。ミノウミウシの仲間で毒を持っており、大きさもほぼ同じだった。

一般に、共生する生物はすみかとしている生物に溶け込むような見た目になることが多いが、新種のゴカイはウミトサカの色彩と異なり目立っていた。長い触手と短い触手を交互にもつところや、触手の色などがウミウシに似ていた。名古屋大の自見直人講師は「ゴカイらしさを消している。近縁な種は普通のゴカイと同じ姿をしているため、どうやってウミウシらしくなったのかを調べていきたい」と話す。遺伝子解析などによって進化の過程を明らかにする。

新種と分かったゴカイは、ロシア科学アカデミー生態進化研究所とスペインのブラネス高等研究センターの共同研究者がもともと2000年代に見つけていたが、標本を紛失していたため研究が進んでいなかった。自見講師らが再発見し、新種と明らかになった。自見講師は「共同研究者もゴカイの専門家だがウミウシと見間違えていて、顕微鏡観察で初めてゴカイと分かったと聞いている」と話す。

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