肝臓の脂質代謝を促して脂質異常症を治療する新薬候補を開発=名古屋大学提供

名古屋大学の大川妙子准教授らの研究グループは、血中のコレステロールや中性脂肪が過剰になる脂質異常症の新薬候補を開発した。脂質の代謝に関わる甲状腺ホルモンに似た分子で、既存の分子で課題だった骨密度の低下や心拍数の異常な上昇などの副作用が軽減した。製薬企業などと連携して臨床応用を目指す。

脂質異常症は肥満や運動不足で発症する病気で、血中に過剰に存在する脂質が血管の壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こす。血栓ができることもあり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な病気の発症につながる可能性がある。

世界肥満連合(WOF)は2035年までに世界人口の半数以上が肥満または過体重になると予測する。コレステロールの合成を抑える「スタチン」や小腸からの脂質吸収を抑える「エゼチミブ」が主に使われるが、薬の飲み合わせなどで服用できない場合もあり、「より多様な治療法が求められている」(研究チームの佐藤綾人特任准教授)。

研究チームは脂質代謝を制御する甲状腺ホルモンに着目し、構造が似た分子を開発した。甲状腺ホルモンは脂質を代謝する肝臓以外に、心臓や骨にも作用して不整脈や骨密度を低下させる影響もある。大川准教授らの分子は肝臓にのみ作用する構造に設計した。

脂質異常症を発症したマウスに投与したところ、血中や肝臓の脂質量を減少させることができた。海外の研究チームが既に開発していた別の分子で確認された心拍数の増加や骨密度の減少といった副作用の影響も見られなかった。

佐藤特任准教授は「臨床応用には製薬企業などとの連携が重要になる。多くの患者に薬を届けられるよう研究を進めていきたい」と話す。研究成果をまとめた論文は英医学誌「コミュニケーションズ・メディスン」に掲載された。

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