詳しく知りたい<1>

 原子力発電所で使い終わった核燃料、いわゆる使用済み核燃料に関するニュースを目にしますが、いったい何が問題なのでしょうか? 国は、使用済み核燃料をリサイクルする施策をとっていますが、そのための工場が未完成で、使用済み核燃料がたまりつづけているのです。一問一答形式で詳しく解説します。

【連載】核燃料のゆくえ

原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。

 Q 使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設が必要なのは「核燃料サイクルがうまくいっていないから」と聞くけど、原子力発電の仕組みと核燃料サイクルについて教えて。

 A 原子力発電は火力発電と同じように、水を沸騰させて蒸気をつくり、それでタービンを回して発電する。火力発電は天然ガスなどを燃やすが、原発は核燃料のウランの核分裂で生じる熱を利用するんだ。

 Q ウラン燃料とは?

 A 核燃料を製造する三菱原子燃料などによると、長さ4メートル前後、直径約1センチの金属製の燃料棒の中に、小さな円柱状の燃料ペレットを数百個詰めている。中国電力によると、天然ウランには核分裂しにくいウラン238が約99%、核分裂しやすいウラン235が約0.7%含まれている。そのウラン235を3~5%に濃縮して、燃料ペレットを作るんだ。

 Q 核分裂とは?

 A 電力各社でつくる電気事業連合会によると、ウラン235に中性子をあてると、壊れると同時に中性子が2~3個放出され、熱エネルギーが生じる。放出された中性子がさらに別のウラン235にあたり……と連鎖的に核分裂が起き、大きな熱が生まれるんだ。

 Q 強いエネルギーを発するんだね。

 A そうだね。核燃料の大半を占めるウラン238に中性子があたると、核分裂しやすいプルトニウム239になる。原発で使った後の核燃料には、このプルトニウム239も含まれるんだ。

 Q 原発で使い終えた核燃料はその後どうするの。

 A 使用済み核燃料からプルトニウム239などを回収して、新たな燃料「MOX(モックス)燃料」をつくって原発で再利用する。これをプルサーマルと呼ぶ。資源が乏しい日本は核燃料を再利用しようという考え方で、この核燃料サイクルという仕組みを50年以上前から推進してきた。プルトニウム239などを高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料に使い、新たにプルトニウム239を生み出す構想もあったが、トラブル続きで廃炉が決まった。

 Q MOX燃料は国内でつくっているの?

 A 使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場が未完成なんだ。青森県六ケ所村で建設中だけど、1997年の完成予定は26回延期され、現時点の予定は24年度上期。それも再延長の可能性がある。使用済み核燃料はこれまで、海外で再処理してMOX燃料にしてもらってきた。

 Q それで使用済み核燃料の行き場がないんだね。

 A 原発を運転すれば、使用済み核燃料は増える一方だけど、国内では再処理できない。だから使用済み核燃料の置き場が足りなくなりつつあり、中間貯蔵施設などの保管施設が必要になっているんだ。原発を運転すると、再利用できない高レベル放射性廃棄物もでる。こうした「核のごみ」を地下に閉じ込める最終処分場も国内にないんだ。(興野優平、松田史朗)

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