ロボット制御ソフト開発のスタートアップ、Mujin(東京・江東)が海外展開を加速させている。ロボットに高度な知能を持たせ、最適な動作経路やスピードなどを自分で調整するのが強みだ。国内に加え、米欧の自動化需要を取り込んでいる。推計企業価値が10億ドル(約1500億円)以上の未上場企業「ユニコーン」への仲間入りが近づく有力企業だ。

国内ではトヨタ自動車やイオン、ファーストリテイリングなど名だたる大手企業を顧客に持つ。Mujinを2011年に共同創業した滝野一征最高経営責任者(CEO)とデアンコウ・ロセン最高技術責任者(CTO)に、今後の成長戦略などを聞いた(文末に関連動画の紹介があります)。

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Mujinの滝野一征CEO㊧とデアンコウ・ロセンCTO

米国は自動化のチャンス大きい

――米欧や中国に拠点を設けています。海外事業の現状は。

滝野氏「新型コロナウイルスの感染拡大によって海外展開が少し遅れたが、インフレで人件費が上昇し、自動化の需要が一気に高まった。海外では当社ほどの技術力はないが資金力のある競合他社がたくさんある。スピードアップしないといけない」

――今後、海外売上比率をどの程度まで高めますか。

滝野氏「売上高は非公表だが、現在の海外売上比率は4割程度だ。日本を重要な研究開発の拠点とし、世界で売っていくというのが勝ち筋だ。世界企業になるためには、海外で日本の5倍以上を稼ぐ会社になる必要がある」

――米国では工場などの自動化が遅れているのでしょうか。

滝野氏「日本に比べて進んでいない印象で、チャンスだ。まだ人手でやっている作業が多い。日本より物量も大きいので自動化の導入効果が高い」

ブルガリア出身のロセンCTOは米国などでロボット工学を学び、2011年に滝野CEOとMujinを設立した

――競合他社と比べた製品・サービスの強みは何でしょうか。

ロセン氏「(ソフトに多様な動きを教え込んでおり)顧客が導入する際に、ロボットの動きをプログラミングするティーチングの時間が必要ない。新しい環境にすぐに対応できるのが強みだ」

滝野氏「当社が成功した要因は、ロセンCTOが現場に行くのをいとわないことだ。米国では新参者だったが、CTOが日本で培った技術を持ち込んだことで、米国でも受け入れられるようになった。現場主義という文化が根付き、顧客からの信頼につながっている」

ユニコーンは過程にすぎない

――日本経済新聞の2023年の「NEXTユニコーン」調査では、推計企業価値が1186億円でした。ユニコーンへの仲間入りが近づいています。

滝野氏「時価総額はKPI(重要業績評価指標)の一つだが、ユニコーンを目標にしたことは一度もなく、ただのプロセスだ。顧客に当社の製品や技術を使って課題を解決してもらい、幸福度を高めていけるかが目標だ」

ロセン氏「ロボット業界で(世界でプラットフォーマーとなる)米グーグルのような成功事例はまだない。当社が成功事例になり、他の企業もそういう道を歩めるようになってほしい」

ロボットの制御ソフトが最適な動作経路やスピードを自分で調整する(東京都江東区のMujinの本社内)

――ロボット制御を高度化するために、デジタルツイン技術や人工知能(AI)の一種である「機械知能」を活用していますね。

滝野氏「ロボットが現実世界で何か作業すれば、周りの環境が変わる。現実世界の状況をセンサーで把握し、ロボットをどう動かすかデジタル世界で考えた上で、ロボットが現実世界で作業する。この繰り返しを高速回転させるのが機械知能だ」

「デジタル世界と現実世界の間には実はギャップがある。これを当社の技術で埋めている。創業から十数年を経て、今ではかなり精度よく動くようになった」

(聞き手は小田浩靖)

Mujinについてはテレビ東京も有力スタートアップに焦点を当てたシリーズ企画「NEXTユニコーン」で特集しています。Mujinの技術力と経営戦略を動画で深掘りしたコンテンツをこちらから視聴できます。
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/original2/vod/post_302172?utm_source=nikkei&utm_medium=link&utm_campaign=240822_unicorn_mujin

また、Mujinの滝野CEO、ロセンCTOへのインタビューの動画版はこちらです。
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/nms/vod/post_302021?utm_source=nikkei&utm_medium=link&utm_campaign=240822_unicorn_mujin
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