6枚のペロブスカイト太陽電池がガラス張りの天井の内側に設置されている

神奈川県、日揮、エネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)は7月末から、観光地・江の島(藤沢市)で薄くて曲がる次世代型の「ペロブスカイト太陽電池」の実証実験を始めた。観光施設のガラス製屋根の内側にシート状の太陽電池を設置し、ガラス越しの発電出力を調べる。超高層ビルの窓など新たな設置場所の可能性を探る。

江の島の頂上に立地する植物園「サムエル・コッキング苑」にあるガラス張りの温室遺構展示棟で実験する。屋根の内側に6枚のペロブスカイト太陽電池を設置した。

京都大発スタートアップのエネコートテクノロジーズが開発したペロブスカイト太陽電池は、曇り空や室内LEDライトのような暗い光でも高い発電能力を発揮する。大きさが縦360ミリメートル、横465ミリメートル、厚さ1ミリメートルで、重さは200グラム未満と軽量化を実現した。

日揮は独自の「シート工法」でペロブスカイト太陽電池を遮熱シートと一体化し、1枚あたりの重さを約250グラムに抑えた。1平方メートルあたり約12キログラムの従来型の太陽光電池パネルに比べ10分の1程度の重さだ。

ペロブスカイト太陽電池を取り付けた黒岩知事(左)と日揮の山口康春社長(7月29日、藤沢市)

シート工法はペロブスカイト太陽電池を簡単に着脱できるのが特徴だ。屋根や壁面と一体化する必要がなく、専用の金具で後付けできる。屋根や窓の内側といった対荷重の小さい場所にも設置できる。

実験ではガラス製屋根の内側に設置したペロブスカイト太陽電池が、ガラス越しの太陽光でどの程度発電できるのか調べる。屋根の上や壁面など屋外に設置した場合、発電効率は15%程度。ガラスとシートの距離を変え、発電効率を調べる。

江の島を実証実験の場所に選んだのは、ペロブスカイト太陽電池の普及に向けた情報発信の狙いもある。温室遺構展示棟で発電した電力は、クーリングファンや江の島を紹介するイルミネーション模型を動かすのに使う。来園者にペロブスカイト太陽電池を体感し、身近に感じてもらう狙いだ。

将来は江の島内で設置場所を増やし、冬に実施する豪華なイルミネーションの電力を補う構想もある。

黒岩祐治知事は江の島での実証実験開始式で「脱炭素化に向けて鍵を握る技術を、より多くの人に見て知ってもらいたい」と述べた。

国内の多くの太陽光電池メーカーはペロブスカイト太陽電池の量産化や実用化に向けた実証実験を競っている。ガラス越しでも発電効率が低下しなければ、都市部で急増する高層ビルの窓の内側など設置場所が大きく広がる。日揮は「新たな可能性を探りながら早期の社会実装を目指したい」としている。(竹内紘雅)

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