皆既日食は、太陽と月と地球が一直線に並び、地球から見た太陽が月と重なって完全に隠れる珍しい天体現象です。
アメリカでは、現地時間の8日午後、南部テキサス州から東部メーン州にかけて大陸を斜めに横断する形で起きます。
アメリカで観測されるのは2017年以来で、今回はテキサス州サンアントニオやダラス、それに、インディアナ州インディアナポリスなど大都市で観測できることに加え、広い地域で太陽の一部が欠ける部分日食が見られるとあって各地で大きな盛り上がりを見せています。
このうち、ダラス中心部にある大きな広場では、日食を安全に見るための「日食グラス」や記念のTシャツなどが売られていました。
また地元の飲食店では、今回の天体ショーを盛り上げようと、皆既日食の際の暗闇を表現したという真っ黒なカクテルを用意していました。
広場でTシャツを購入していた旅行客の女性は「みんな日食が見たくて大騒ぎになっていますね。私もとても楽しみです」と話していました。
アメリカでは各地でさまざまなイベントや商品が企画されていて、アメリカの民間調査会社は今回の経済効果をアメリカ全体でおよそ60億ドル、日本円でおよそ9000億円に上ると試算しています。
動物の反応を調べる研究も
今回の皆既日食は研究者にとっても貴重な機会で、アメリカ各地でさまざまなテーマの研究が予定されています。
その一つが、皆既日食のときに動物がどのような反応をするか調べる研究です。
ノースカロライナ州立大学のアダム・ハートストーンローズ博士の研究チームでは、2017年にアメリカで起きた皆既日食のときからこのテーマに取り組んでいます。
研究チームによりますと、このときは▽たくさんのフラミンゴが一か所に集まってきたり、▽キリンが突然走り出したりしたほか、▽夜になったと勘違いしたかのようにねぐらに向かうなど、ふだんとは異なる行動を見せた動物が数多くいたということです。
このときのことについて、ハートストーンローズ博士は「正直なところおもしろいことは起きないと思っていました。しかしそれは完全に間違いでした。観察した動物のうち、実に75%が皆既日食のときに非常に強い反応を示したのです」と振り返っていました。
動物たちがなぜこうした行動を起こすのか、詳しいことは分かっていません。
この謎の解明に少しでも近づこうと、研究チームは今回、およそ40人の態勢で20種類以上の動物を観察する準備を進めてきました。
そして、▽フラミンゴやキリンが前回の皆既日食と同じような行動をとるのかや、▽「人間に最も近い生き物のひとつ」とも言われる類人猿のボノボの反応を観察して、動物たちがめったに起きない自然現象をどのように認識しているのか調べるということです。
今回の研究についてハートストーンローズ博士は「われわれの研究は、私たちの実生活に何らかの影響を与えるようなものでは全くありません。純粋な科学研究です。『皆既日食のとき、動物が何を考えているのか』という純粋な疑問に答えるためのものです」と話していました。
“4分27秒間だけ” 限定商品で盛り上げ
アメリカでは皆既日食にあわせた限定商品でこの天体ショーを盛り上げようという動きが出ています。
このうち、アメリカで人気のあるチップスを販売する食品メーカーは、皆既日食にちなんだ限定商品を提供することにしています。
この限定商品は太陽が月と重なっている様子を連想させるデザインのパッケージで、メーカーの発表によりますと、皆既日食が起きている4分27秒間だけ、公式サイトから提供されるということです。
大リーグにも影響が
今回の皆既日食は、大リーグの日程にも影響が出ています。
大リーグ機構は8日にニューヨークのヤンキースタジアムで行われる、ヤンキースとマーリンズの試合の開始時間を4時間遅らせると発表しました。
ニューヨークでは、太陽が90%近く欠ける「部分日食」が起きます。
当初の開始時間だと、試合中に日食が起きることになり、発表では「日食のさなかに試合を行うことで試合が遅れる可能性などを考慮した」としています。
また、皆既日食が起きるオハイオ州クリーブランドでは、日食が終わったあとにガーディアンズとホワイトソックスの試合が始まることになっています。
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