東京大学の野崎京子教授らの研究グループは、プラスチックのポリエチレンの一種を低温で細かく分解する技術を開発した。触媒にセリウム塩を使い、セ氏80度で青色LEDライトを当てる。通常、ポリエチレンの分解にはセ氏数百度の高温が必要だが、新しい手法は低温でリサイクルしやすい大きさにできる。

研究グループは、反応性の高い構造が付いた「カルボキシ化ポリエチレン」を分解する技術を開発した。このポリエチレンは日本ポリエチレン(東京・千代田)が開発を進めている。通常のポリエチレンと比べて接着性や強度に優れるとみられる。

レジ袋などに使う通常のポリエチレンは、生産量が多いプラスチックの一つだ。化石資源の枯渇や環境汚染を防ぐためにプラスチックをリサイクルする重要性が増しているが、ポリエチレンは構造が安定しているためにセ氏300〜500度に加熱しないと分解しない。そのために環境への負荷を抑えたリサイクルが難しかった。

フィルム状のカルボキシ化ポリエチレンでも分解できた=野崎教授提供

触媒のセリウム塩を入れたセ氏80度の水などの中でカルボキシ化ポリエチレンの粉末に青色LEDライトを48時間照射すると、分子量が約500の小さい化合物に分解できた。さらにセリウム塩とカルボキシ化ポリエチレンをすりつぶして混ぜ、セ氏80度で青色LEDライトを96時間照射すると手軽に分解できた。

この技術で分解したカルボキシ化ポリエチレンの分解物からは効率的に水素を取り出したり、別の化学反応を加えることでメタノールなどの有用な化合物に変換したりできると期待される。今後は実用化に向けて企業との共同開発などを検討する。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。