詳しく知りたい<6>

 原発と使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が計画されている山口県上関町はどのようなところでしょうか。 瀬戸内海沿いの歴史あるまちですが、人口が減り続け、高齢化率は全国で9番目の高さです。一問一答形式で詳しく紹介します。

【連載】核燃料のゆくえ

原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。

 Q 中国電力が原発の使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設を検討している山口県上関町はどんな所?

 A 県南東部に位置し、瀬戸内海に突き出た室津半島、橋で陸続きになった長島、祝島や八島などの離島からなる。約40年前に計画が浮上した上関原発の建設をめぐって町は揺れてきた。中間貯蔵施設の候補地は長島の原発の予定地近くだ。

 Q 町観光協会は「浪漫あふれる海峡の町」とPRしている。

 A 古くから海上交通の要衝として関所が設けられた。県内の3カ所の関所(防長三関)のうち、都に近いほうから上関、中関(防府市)、下関と呼ばれたのが由来だ。15世紀の文書に「上関」の地名が出てくる。

 江戸時代に長州藩の直轄地となり、北前船や朝鮮通信使が寄港した。通信使入航の絵図「朝鮮通信使船上関来航図」はユネスコの「世界の記憶」に登録された。

 50年前に放送されたNHK連続テレビ小説「鳩子の海」は上関町が舞台だった。広島の原爆のショックで記憶を失った戦災孤児の半生を描いた。

 Q 町の現状は?

 A 人口は1960年代に1万人を超えていたが減少が続き、4月現在で2230人。高齢化率は6割に迫り、2020年の国勢調査では全国の自治体で9番目の高さだった。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計で、20年から50年にかけての減少率は59・2%と中国地方の自治体で2番目に高く、50年に1千人を切るとの見通しが示された。

 Q 町にはどのような産業があるのか?

 A 漁業の就業者が最も多く、クルマエビの養殖が盛ん。歴史的背景から海運業や造船に関係した鉄工業が地場産業として発展してきたが、現在はいずれも低迷し、雇用の確保がかねて町の課題になっている。ビワやかんきつ類が作られているが、町の大半が山地や斜面で、田畑や工場の用地にできる土地が少ない。

 Q 町の財政状況は?

 A 調査や準備工事に伴う原発関連の交付金は累計77億円に上り、「原発マネー」で潤った時期もあった。「平成の大合併」で周辺市町との合併協議を「原発との共存共栄で独自の町づくりをする」として離脱した経緯がある。

 実際、準備工事が始まった09年度から4年間、計25億円の多額の特別交付金が入った。温泉施設「鳩子の湯」や道の駅はその交付金を充てて建てられた。中国電力も町内の道路を整備するなど町の財政を支えてきた。

 だが、11年の福島第一原発の事故で上関原発の準備工事は中断され、止まったままだ。原発計画に伴う交付金は年に約8千万円ほどで推移し、増額は見込めない。町の予算規模は、ピークの1998年度は約60億円だったが、近年は30億円台に落ち込んでいる。(山野拓郎)

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