豪雨の後、町に流れ込む土石流の高さや量をメタバース(仮想空間)で再現する手法を、岡山理科大(岡山市北区)の研究グループが開発した。土砂災害ハザードマップをCGにより3次元で可視化。臨場感を持たせることで、被災リスクや災害時のイメージを持ちやすくした。
岡山、広島両県で防災や土砂災害対策のアドバイザーを務める同大の佐藤丈晴教授(土木地質学)らが開発した。土砂災害ハザードマップは黄色(警戒区域)や赤色(特別警戒区域)で危険度の範囲が示される。
開発した手法では、そのハザードマップ作成のもととなった広島県の基礎調査データを活用。警戒区域が指定されている広島市安佐北区可部町勝木の原迫川流域約7㌶を再現した。地形や家屋もCGで再現され、到達する土石流の高さまでわかるようにした。
広島県では、2014年に広島市北部で土砂災害が起き、18年にも西日本豪雨に伴う土砂災害が発生。いまも全国最多の4万7838カ所(8月29日現在)の警戒区域を抱える。県はこれまでも警戒区域を示す3次元地形図やAR(拡張現実)技術を活用したハザードマップを公開してきたが、土石流の高さを十分伝えるという点では課題が残っていた。
佐藤教授は「実際の災害時、土石流の深さ(高さ)が、人の命を守るかどうかに大きく関わる。家の中のどこの部屋にいれば大丈夫なのか、よりリスクが低いのか一目瞭然」と話し、3次元で表現する重要性を強調した。
今回は基礎調査データを広島県から入手したが、基礎調査は県単位で行っているため、他の地域でもデータがあれば同様の再現が可能になる。佐藤教授ら研究グループは、開発した手法を市民の防災意識の向上に役立てていきたいという。(北村浩貴)
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