探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂からは、生命に欠かせないアミノ酸などの有機物が見つかっている。数十億年以上も前にできたものが、残っているのはなぜなのか。そのカギとなる「にがり」の組成を明らかにしたと海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの研究グループが5日、発表した。地球に有機物がもたらされた歴史の解明にも役立つという。
リュウグウはかつて、水に満ちた時期があったことが分かっている。研究グループは今回、水と反応してできた鉱物を砂から抽出。その鉱物の組成を調べることで、反応に使われた水にはどんな成分がどのくらいの割合で含まれていたかを再現した。
その結果、ナトリウムが49.5%、マグネシウムが26.1%を占めた。ナトリウムやマグネシウムなどには、有機物を凝縮して安定化させる働きがある。豆乳に、にがり(海水を煮詰めて塩をつくった後に残る液体。塩化マグネシウムが主成分)を加えると豆腐になるのと同じ原理だという。
リュウグウの砂からは、酢酸などの揮発性の高い有機物も見つかっており、宇宙空間に消えて無くならずにとどまっていたのは、水に含まれていたナトリウムなどの効果と考えられるという。
JAMSTECの吉村寿紘(としひろ)・副主任研究員(地球化学)は「太陽系初期の段階で有機物の保存に水がどう作用したのかを解明する上で重要な発見だ。有機物が、小惑星からどういった過程を経て地球にもたらされたのかを明らかにする際の知見にもなる」と話す。
論文が科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(https://doi.org/10.1038/s41467-024-50814-y)に掲載される。(佐々木凌)
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