報道陣に公開された地球深部探査船「ちきゅう」(5日、静岡市清水区)

海洋研究開発機構(JAMSTEC)を中心とした国際研究チームは2011年に起きた東日本大震災の震源域の海底で掘削調査を始める。地球深部探査船「ちきゅう」でプレート境界が大きくずれた宮城県沖の海底下の試料を採取する。断層周辺の状況を分析し、巨大地震の発生メカニズムの解明を目指す。

JAMSTECは5日、静岡市の清水港でちきゅうを報道陣に公開した。ちきゅうは6日に清水港を出発し、調査海域に向かう。

調査は東日本沖合にある日本海溝のうち、地震で大きな滑りが発生したプレート境界の浅い部分と、沈み込む前の太平洋プレート上の2カ所で実施する。探査船からドリルパイプを水深約7千メートルの海底に下ろし、それぞれ地下約950メートルと約450メートルを掘削する。

地球深部探査船「ちきゅう」の掘削機器の操縦を行う「ドリラーズハウス」(5日、静岡市清水区)

日米欧が主導する「国際深海科学掘削計画(IODP)」の一環で調査し、世界10カ国から計56人の地震や地質学などの専門家が参加する。調査期間は約3カ月を予定する。

調査を通じて、断層の構造や構成する物質の特徴を明らかにする。断層の時間変化を見て、次の地震に向けて断層周辺にどの程度の力が蓄積しているのかや、断層がどの程度くっついているかも調べる。地下深くの水(流体)の動きにも注目し、巨大地震が発生したメカニズムの解明につなげる。

調査の共同首席研究者の一人でJAMSTECの小平秀一理事は「千年に1度の科学的問題に答えれる貴重な機会で、研究者の使命として疑問を明らかにしたい」と話した。

掘削機器が備わる地球深部探査船「ちきゅう」の掘削フロア(5日、静岡市清水区)

ちきゅうは震災翌年の12年にも宮城県沖で掘削調査を行い、今回の調査対象と同じプレート境界の浅い部分から断層の試料を採取した。

分析の結果、地震が起こらないと考えられていたプレート境界の浅い部分の断層が滑りやすい状態だった。断層周辺に蓄積されていた力が地震発生時にほぼ全て解放されたことが分かった。大震災ではプレート境界の浅い部分まで滑ったことが強い揺れや巨大津波につながったとされる。

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