大阪大学や医薬基盤・健康・栄養研究所などの研究チームは24日、腸内細菌を原因とするタイプの肝臓の炎症(肝炎)を防ぐ働きを持つ免疫細胞の一種「マクロファージ(大食細胞)」を発見したと発表した。肝炎を予防、治療する新薬を開発できる可能性がある。

マクロファージのマクロは「大きい」 、ファージは「食べる」を意味しており、「大食い細胞」ともいわれる。病原体や死んだ細胞を食べるなどして体を守っている。

肝臓には腸内細菌などの異物がしばしば入ってくるが、健康な人では素早く取り除かれ、炎症反応は出ない。肝臓内のどの細胞がどのように炎症を抑えているのかは分かっていなかった。

研究チームは独自の技術を用いて、生きたマウスの肝臓を調べた。血流の入り口にある細胞を詳しく解析したところ、腸内細菌を捕食するマクロファージを見つけた。遺伝子技術でこのマクロファージが働かないマウスを作り、肝臓に炎症を発生させると、通常のマウスより炎症を多く起こした。

肝臓に炎症が多く起こる難病の患者から採取した肝臓の組織を調べると、このマクロファージが大きく減少していた。発見したマクロファージが、侵入した細菌などを食べて肝臓の炎症反応を抑えていることが明らかになった。腸内細菌が出すイソアロリトコール酸という特殊な物質がこのマクロファージを増やす効果があることも明らかにした。

脂肪肝の患者は、様々な理由で肝炎に発展してしまうことがある。阪大の石井優教授は「イソアロリトコール酸を使って発見したマクロファージを増やす薬を作れれば、肝炎を予防、治療できる可能性がある」と話す。研究成果は英科学誌ネイチャーに発表した。

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