宇宙開発に携わった経験のない女性らが、4年余りかけて一から手作りした超小型人工衛星「Emma」が8月上旬に打ち上げられ、地球を周回する軌道上での運用が始まった。中心を担ったのは「宇宙が好き」という気持ちだけで集まった女性らのグループ。メンバーの塔本愛さん(34)は「宇宙好きの人がこの業界に踏み出すきっかけになりたい」と話す。

契機となったのは、2020年に宇宙業界に関心を持つ女性向けに開催されたイベントだった。星がきれいに見える地域で育ち、「子どものころから宇宙好きだった」という塔本さんも参加。自分たちで何ができるかを話し合い、人工衛星の打ち上げを目指すことになり、「コスモ女子アマチュア無線クラブ」を発足させた。

最初は「何も分からない状態」で、協力してくれる専門家を自分たちで探し、電子回路製作に不可欠なはんだ付けを練習するなど、基礎からのスタートだった。

衛星作りのほかにも、データの送受信に必要なアンテナや無線機を備えた「地上局」を設置したり、関係省庁や国際機関に膨大な量の申請書を提出したりする必要があり、当初は22年2月に打ち上げ予定だった衛星の完成は今春にずれ込んだ。

完成した衛星は1辺約10センチほどで、宇宙から地球を撮影してデータを送る。4月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)に引き渡し、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから8月上旬に打ち上げられた。

多くの困難もあったが、それでも塔本さんらが自力での打ち上げを目指したのは、宇宙業界で働く女性が1割程度と少ない現状を考えたからだ。「宇宙業界はハードルが高く、女性が参加しづらいイメージがある。宇宙開発が今後さらに進む中で、女性が少ないのは問題だと思った」と振り返る。

約40人のメンバーの中には衛星メーカーへの転職者も出るなど、活躍の場も広がった。塔本さんは「未経験の私たちでも衛星を作ることができた。これを多くの人に知ってもらい、宇宙を好きな人が一歩を踏み出すきっかけになれば」と笑顔を見せた。

人工衛星を手作りした「コスモ女子アマチュア無線クラブ」の塔本愛さん(左から2人目)らメンバー=4月、茨城県つくば市(本人提供)

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