グーグルディープマインドのデミス・ハサビスCEO

慶応義塾大学は18日、医学や生命科学の優れた研究者を表彰する2024年の慶応医学賞に米グーグルの人工知能(AI)研究開発部門、グーグルディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)と、京都大学の斎藤通紀教授を選んだ。

授賞式は11月20日に慶大信濃町キャンパス(東京・新宿)で開く。受賞する2氏には賞金1000万円がそれぞれ贈られる。

ハサビス氏は囲碁AI「アルファ碁」で有名になった旧ディープマインドの共同創業者で、たんぱく質の立体構造を高精度に予測するAI「アルファフォールド」の開発を主導した。医学や生物学の研究に革新をもたらした功績が評価された。

生物の体内では様々なたんぱく質が働き、生命活動の根幹を担う。たんぱく質の立体構造は人の病気とも密接に関連し、がんなどの病気の解明や治療法の開発といった医学研究で重要だ。21年に無償公開されたアルファフォールドは驚異的な精度でたんぱく質の構造を予測でき、世界の研究者にとって不可欠なツールとなった。

アルファ碁やアルファフォールドの開発には、脳の仕組みに着想を得たAI技術が活用されている。同賞の選考委員会は「さらなる挑戦によって脳の計算原理に基づく汎用人工知能(AGI)が実現すれば、医学生物学研究の変革のみならず、より豊かな人間社会を生み出していくことが期待される」と評した。

ハサビス氏は米国のラスカー賞やブレークスルー賞、カナダのガードナー国際賞など有力な科学賞を相次いで受賞し、ノーベル賞候補との呼び声も高い。1996年に始まった慶応医学賞の受賞者のうち、これまでに10人がノーベル賞に輝いた。

京都大学の斎藤通紀教授

京大の斎藤教授は万能細胞であるiPS細胞から精子や卵子をつくる研究の第一人者だ。マウスのiPS細胞からつくった精子と卵子を受精させ、子どもを誕生させることに成功した。精子や卵子ができる仕組みを試験管内で再現する研究に取り組んできた。

最近ではヒトのiPS細胞から卵子や精子のもとになる細胞をそれぞれ大量につくる技術を開発した。卵子や精子ができる仕組みや不妊症の原因を解明する研究に役立つと期待されている。将来は人工的にヒトの卵子や精子をつくれるようになる可能性もある。

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