クラリベイト引用栄誉賞を受賞した信州大学の堂免一成・特別特任教授㊨(19日、東京都港区)

英調査会社クラリベイトは19日、論文の引用回数が多くノーベル賞級と評価した研究者を対象とする2024年の「クラリベイト引用栄誉賞」を発表した。信州大学の堂免一成・特別特任教授ら日本出身の2人を含む世界の計22人が選ばれた。堂免氏は太陽光のエネルギーを使って水から水素を直接製造できる光触媒システムを開発した。

日本出身では米国立眼病研究所の彦坂興秀・卓越研究員も選ばれた。引用栄誉賞は論文が引用された回数のほか、研究への貢献度や他賞の受賞歴などを総合的に分析し、授与している。02年の開始以降、同賞受賞者のうち75人が23年までにノーベル賞を受賞しており、ノーベル賞の登竜門としても注目されている。

堂免氏は1段階の反応で水を水素と酸素に分解できる微粒子状の光触媒を開発し、06年に英科学誌ネイチャーで発表した。太陽光のエネルギーで作った水素は二酸化炭素(CO2)を発生しないエネルギーや化学原料になり、脱炭素技術として期待される。

大規模で低コストな水素製造の実用化にはエネルギー変換効率のさらなる向上が必要だ。堂免氏は19日の記者会見で「2、3年以内に効率5〜10%の光触媒システムを開発したい」と語った。

彦坂氏は運動制御や学習行動の中心となる大脳の基底核という部位の機能を解明する研究で、米英の研究者とともに選ばれた。大脳基底核の研究はギャンブル依存症などの精神疾患の治療といった医学応用の面でも近年注目されている。

このほか、たんぱく質の立体構造に関する研究で米グーグルの人工知能(AI)研究開発部門、グーグルディープマインドのデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)とジョン・ジャンパー氏らも選ばれた。両氏はたんぱく質の構造を高精度に予測するAI「アルファフォールド」の開発を主導し、医学や創薬の研究に革新をもたらした。

24年のノーベル賞は10月7日の生理学・医学賞を皮切りに順次発表される。物理学賞は8日、化学賞は9日に発表予定だ。

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