農業・食品産業技術総合研究機構の西尾元秀主任研究員や石井和雄領域長は、黒毛和牛の血縁の近さをゲノム(全遺伝情報)分析をもとに数値化する手法を開発した。血縁の遠い牛同士を交配させやすくなる。過度な近親交配に伴う発育の悪化や受胎率の低下を防いで生産性の維持を狙う。
黒毛和牛をはじめとする肉牛の品種改良では霜降りの質などが良いごく少数の雄を種牛に使うため、同じ種牛を先祖に持つ牛が増えて近親交配が進んでいる。両親から似たゲノムを受け継ぐために発育に不利な特徴などが生じやすくなり、生産性の低下が懸念される。
生物の遺伝情報は4種類ある塩基の配列で決まる。同じ生物でも配列がわずかに異なり個体差につながる。農研機構と家畜改良センターの研究チームは黒毛和牛のゲノムの「一塩基多型(スニップ)」という違いに着目した。3万個以上のスニップのデータから塩基配列が一致する部分の長さを分析し、血縁の近さを数値化した。牛の家系情報を使う従来の算出法と高い精度で一致することを確かめた。
農家が入手できる牛の家系情報は通常、3代前までに限られるため、種牛と雌牛の血縁の近さを正確に調べづらい。開発した手法は家系情報が無くても使える。費用は1万〜2万円で全ての塩基配列を調べて比べるよりも安く済む。豚や羊など他の家畜にも応用できる。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。