CBインサイツは毎年、人工知能(AI)分野の有望な未上場企業100社「AI100」を発表している。8回目となる2024年の100社の主な特徴は以下の通りだ。
・米国やフランス、南アフリカなど16カ国の企業が選ばれた。
・基盤モデルからヒューマノイド(ヒト型ロボット)まで、30を超える分野のソリューションに及ぶ。
・アーリーステージ(初期)のスタートアップが68%を占めた。仮想世界やオートノマス(自律型)工場、少数言語の言語モデルなどの開発に取り組んでいる。
・16年以降、トヨタ自動車や米ネットフリックス、世界銀行などの業界リーダー600社以上とビジネス関係を構築している。
資金調達活動、提携、チーム力、投資家のプロフィル、特許活動、CBインサイツの独自スコアなどのデータに基づき、100社を選んだ。候補企業のソフトウエア購入者の感想や、各社から提出されたアナリストの分析も調べた。
2024年版の有望AI100社のハイライト
資金調達
AI100社の20年以降のエクイティ(株式)による資金調達額は計280億ドル以上、調達件数は240件以上だった(24年3月22日時点)。米オープンAI(Open AI)の調達額は120億ドルと全体の40%以上を占めた。一方、調達額が1000万ドル未満の企業は25%で、エクイティによる資金調達を実施していない企業もあった。
資金調達がアーリーステージ(シード/エンジェル、シリーズA)か、まだ外部から出資を受けていない企業は3分の2強(68%)に上った。
企業価値
企業価値10億ドル以上のユニコーンは19社だった。
一方、従業員1人当たりの企業価値が最も高かったのは、サカナAI(Sakana AI、日本)の6700万ドルだった(24年初めに従業員わずか3人で企業価値が2億ドルと評価された)。生成AIの開発に大きな影響を与えた米グーグルの深層学習モデル「トランスフォーマー」の論文執筆陣の1人が創業したサカナAIは「自然からインスピレーションを得た」新しいAIアーキテクチャーの開発に取り組んでおり、このほど3つの日本語ベースの言語モデルを発表した。
売上高マルチプル
100社の成熟度や製品開発の段階、売上高は様々だ。
企業価値を売上高で割った「売上高マルチプル」が最も高いのは、オープンソース開発向けAIインフラ基盤を運営する米ハギングフェイス(Hugging Face)の150倍(23年の売上高3000万ドル、企業価値45億ドル)だった。2位は次世代の検索エンジンの開発に取り組む米パープレキシティ(Perplexity)の65倍(24年の年間経常収益=ARRは800万ドル、23年の企業価値は5億2000万ドル)だった。
まだ外部出資を受けていない画像生成プラットフォームの米ミッドジャーニー(Midjourney)は、ARRが2億ドルと売上高が最も多い企業の1つだった。
国別の内訳
米国以外の15カ国に拠点を置く企業は31社だった。アフリカーンス語やズールー語、ソト語などサブサハラ(サハラ砂漠以南)のアフリカ言語の言語処理ツールを開発する南アフリカのレラパAI(Lelapa AI)や、判読可能なテキストからの画像生成に取り組むカナダのイデオグラムAI(Ideogram AI)などだ。
欧州を拠点とするスタートアップは19%で、英国、フランス、ドイツに拠点を置く企業が含まれる。
カテゴリー&アプリケーション
今回選出された100社のうち、基盤モデルやAI半導体、AI開発プラットフォームなど中核的なAIインフラの構築に取り組んでいる企業は3分の1以上を占めた。
プログラムコードの自動生成、クリエーター向けツール、検索など水平型(業界横断型)ソリューションを手掛ける企業は計30社だった。ゲーム、医療・ヘルスケア、教育、製造業などの垂直型(業界特化型)は34社だった。
AIの活用がまだ一般的ではないニッチなアプリケーションの開発に取り組んでいる企業もある。
・米アトミック・インダストリーズ(Atomic Industries):製造業のツールや金型製作用のAIを開発。独ポルシェやヤマハ、トヨタ自動車のベンチャー部門から出資を受けている。
・米ローズバッドAI(Rosebud AI):テキストからゲームを生成。オープンAIの共同創業者イリヤ・サツケバー氏、アンドレイ・カルパシー氏、米コースラ・ベンチャーズから出資を受けている。
・英フローレスAI(Flawless AI):吹き替え言語に合わせて映像の俳優の口の動きを変える映画業界向けの視覚ダビングツールを開発。
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