大阪大学の滝沢忍教授や静岡理工科大学の桐原正之教授らは日本軽金属などと共同で、環境負荷を抑えて、狙った分子を高効率で合成する手法「クリックケミストリー」で使うスルホニルフルオリドを安全に合成する技術を開発した。従来使っていた毒性の高い物質が不要になる。医薬品開発などへの応用が期待される。

スルホニルフルオリドを安全に合成できる=滝沢教授提供

クリックケミストリーは余計な反応が起こりにくく副生成物が生じにくい利点があり、医薬品や高分子材料の開発に役立つ。発見者のバリー・シャープレス氏らは2022年にノーベル化学賞を受賞した。

クリックケミストリーでの分子合成には、窒素を含む特定の構造を持つ物質や炭素の三重結合を有する物質を材料に使う。特に硫黄とフッ素などを含むスルホニルフルオリドを材料に使うと簡単に分子を合成できる。ただスルホニルフルオリドの合成には毒性が高く、取り扱いが難しい有害なガスが必要だ。

研究チームは安全にスルホニルフルオリドを合成する技術を開発した。硫黄を含む物質と高純度の次亜塩素酸ナトリウムの水和物を反応させた。さらにフッ化カリウムと反応させることでスルホニルフルオリドの合成に成功した。室温で合成でき、スルホニルフルオリドの収率は最高で99%だった。

毒性の高いガスを使わずに済み、有害な副生成物も発生しない。クリックケミストリーを活用した研究や分子の合成が活発になるのを促せる。

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