インテルはAI向け半導体や受託事業に注力している=ロイター

【シリコンバレー=清水孝輔】米インテルが25日発表した2024年1〜3月期決算は、最終損益が4億3700万ドル(約680億円)の赤字(前年同期は27億6800万ドルの赤字)だった。最終赤字は4四半期ぶり。成長分野として重点投資する人工知能(AI)や製造受託の収益貢献が遅れており、4〜6月期の売上高見通しは市場予想を下回った。

1〜3月期は売上高が9%増の127億2400万ドルだった。4〜6月期の売上高見通しは125億〜135億ドルと市場予測を下回り、株価は25日の米株式市場の時間外取引で一時同日終値から約9%下落した。

インテルは25日に配当の実施も発表した。支払日は6月1日で、5月7日時点の株主に対して1株あたり12.5セントを支払う。

パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は25日の決算説明会で「1〜3月期が底だと見ており、 25 年に向けて収益の伸びが強まると予想している」と述べた。AIパソコンなどの需要が高まるという見通しを示した。

インテルはAI向け半導体の開発を急いでいる。9日にはデータセンター向けAI半導体の新製品「ガウディ3」を数カ月以内に投入すると発表した。米メタの大規模言語モデル(LLM)で比較した場合、米エヌビディアの主力AI半導体「H100」に比べてデータ学習速度が平均で1.5倍速いという。

インテルは生成AIの追い風で業績が急拡大したエヌビディアと明暗が分かれている。エヌビディアは株価が1年間で約3倍に伸びた一方、インテルは同期間で2割程度の上昇にとどまる。インテルはAI半導体に開発資金を投じて巻き返しを狙う。

もう一つの注力分野であるファウンドリー(半導体製造受託)事業は立ち上がりに時間がかかっている。インテルは1〜3月期のファウンドリー事業の売上高が前年同期比10%減の43億6900万ドルだった。同部門の営業損益は24億7400万ドルの赤字だった。

インテルの主力のパソコン向けCPU(中央演算処理装置)を中心とする「クライアントコンピューティング」部門は1〜3月期の売上高が前年同期比31%増の75億3300万ドルだった。パソコンでは端末側でAIを処理するための半導体の出荷を増やしている。

米政府は3月、インテルに最大85億ドルの補助金を支給すると発表した。同社は補助金を活用して西部アリゾナ州などの投資を増やし、製造能力を引き上げる。ゲルシンガー氏は補助金を得るために米国で半導体の自国生産を促す法律が成立するように働きかけてきた。

半導体産業は水平分業の構造転換で台湾積体電路製造(TSMC)などが台頭し、かつて市場をけん引したインテルの停滞感が強まっていた。21年に古巣のインテルのCEOに就いたゲルシンガー氏による立て直しは、市場が期待するよりも時間がかかっている。

【関連記事】

  • ・米政府、インテルに1.3兆円補助金 半導体製造で最大
  • ・インテルの新型AI半導体 学習速度、NVIDIA製の1.5倍

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。