東京大学や北海道大学などのチームは30日に会見を開き、製造過程で実質的に二酸化炭素(CO2)を出さない新たなコンクリート素材を開発したと発表した。CO2排出量よりも吸収量が上回るという。今後、建築基準法上の認定を受けた上で、2029年度には実際に建材として使うことを目指す。
コンクリートの原料であるセメントをつくる過程では、炭酸カルシウム(石灰石)に粘土などを混ぜて高温で焼成するため、炭酸カルシウムが熱分解されてCO2が出る。また、焼成に使う約1450度の高温のために化石燃料を燃やせばさらにCO2が出る。国内のCO2の全排出量のうち、セメント業界由来は約4%を占める。
そこでチームは、高温焼成が不要なコンクリートの開発を進めていた。新たな方法では、廃コンクリートを粉々にしてCO2にさらし、廃材に含まれるカルシウムから炭酸カルシウムをつくる。それを成形し、圧力をかけて炭酸カルシウム同士をつなげて固定。最後に加温して仕上げる。
この方法で、製造過程で排出するCO2よりも、吸収するCO2の方が多くなった。製品は、建築基準法で定める強度を満たしたという。
チームは実用に向け、鋼管などと組み合わせて建物の柱部材にした場合の性能評価などを進めている。チームの野口貴文・東京大教授(建築材料学)は今後の課題は生産の効率化や品質の安定化としつつ、「実用化に向けた最低レベルはすでに突破した」と説明した。(市野塊)
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