海水温が高いと、サンマは栄養価の高いエサを食べる機会が減り、小型化に拍車がかかる恐れが高い――。そんな実験研究の結果を、北海道大の山口篤准教授(浮遊生物学)らの研究チームがまとめた。国際誌「フロンティアズ・イン・マリン・サイエンス」の電子版に2日、論文が掲載された。

 研究チームは2021年夏、サンマが回遊する北太平洋の北部で、海水中のプランクトンを採集。異なる水温条件で飼育し、成長率の違いを調べた。

 その結果、動物プランクトンの中でも栄養価が低い「ユーカラヌス・ブンギ」や「メトリディア・パシフィカ」といった種類は、水温が高いと成長率も高まることが分かった。

 ところが、栄養価が高く、サンマにとって重要なエサとなっている「ネオカラヌス・プルムクルス」という種類は、高水温が苦手であることが判明。水温が7度の時と比べ、11度では最大で98%、平均でも52%、成長率が低下してしまうことが明らかになった。

 サンマは主に深さ20メートル以浅を回遊しながらエサを食べる。海水温が高いと、ネオカラヌス・プルムクルスは深い場所へと移動し、サンマが十分な栄養をとる機会そのものが減ってしまう可能性があるという。

 北太平洋では近年、海水温が極端に高い状態が続く「海洋熱波」という現象が目立つようになった。研究チームは、こうした高い海水温が、近年のサンマの「小型化」の原因になっている可能性があると指摘する。

 一連の実験結果について、山口さんは「地球温暖化が進むにつれて、今後さらに痩せて小さなサンマが増えることになるだろう」と話している。(山本智之)

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