「門前払い」。青森県の宮下宗一郎知事は10日、電気事業連合会との会談後、強い言葉を持ち出し、原発の使用済み核燃料を再処理した際に生じる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体=約20本分)の受け入れに拒否感を示した。関連施設の完成延期が続き、核燃料サイクルの先行きは不透明感が増している。受け入れを認める環境にないとの判断だ。
「理解できない。協力もできない」。宮下知事は青森県庁を訪ねた電事連の佐々木敏春副会長(中部電力専務)に対し、ガラス固化体の受け入れ拒否を明言した。
電力各社は使用済み核燃料の再処理を英仏に委託してきた。再処理で出る放射性廃棄物は、フランス分については2033年までに全て返還される日仏間の約束だが、受け入れを予定する六ケ所村の「低レベル廃棄物受入れ・貯蔵施設」は8月、完成予定が「26年度中」に延期された。
フランスには低レベル放射性廃棄物(TRU)が約1800本分ある。輸送に約10年かかるため、33年までの返還が難しくなった。一方、放射線による影響を等しい形でガラス固化体にすれば約20本分ですみ、輸送期間を短縮できる。このため電事連はTRUをガラス固化体に交換した上、同村にある「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」で貯蔵する案を打診した。
佐々木氏は宮下知事に「これまでの方針から大きな変更。県民に多くの心配をおかけする。33年までの返還完了は原子燃料サイクルの推進で重要」と頭を下げた。
ガラス固化体の受け入れ自体はこれまでにも行われていて、07年までにフランスから1310本分が返還され、同センターで保管を続けている。青森県側が今回の約20本の受け入れを拒む背景には、核燃料サイクル関連施設の完成延期を続ける事業者側への不信感がある。
今年8月、日本原燃は再処理工場(青森県六ケ所村)の完成目標を「今年度上期のできるだけ早期」から「26年度中」に、MOX燃料工場(同)も「今年度上期」から「27年度中」に延期した。電源開発も先月、再処理で取り出したプルトニウムやウランを利用して作る「MOX燃料」だけで発電できる大間原発(青森県大間町)での安全対策工事の開始を延期した。
宮下知事は電事連との会談で、「(低レベル放射性廃棄物を受け入れる)貯蔵建屋の増設そのものもままならない状況。検討できる態勢にないことは明白だ」と強調。「国際的な取り決めは大切だが、国際的な信頼よりも国民、県民との信頼関係を第一に事業をしてほしい」と注文した。
施設が完成せず、県側が受け入れ拒否を続ければ、放射性廃棄物の扱いは宙に浮く。宮下知事は会談後、記者団に「(高レベル放射性廃棄物が)門の中に入ってきたら、門前払いということはある」と明言。六ケ所村の戸田衛村長も「聞き置く程度で、今は検討の時期にない」とのコメントを発表。電事連から事前の打診などは一切なかったといい、「こういうやり方もいかがなものか」と不快感を示した。事態は当面進みそうにない。(江湖良二、鵜沼照都)
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