サクラの開花には休眠からの目覚めが不可欠=九州大学提供

九州大学などの研究チームは、サクラが冬の「休眠状態」から目覚める日を予測できる計算モデルを開発した。遺伝子分析で特定した気象条件に基づき、気温から具体的な日にちを絞り込む。地球温暖化の影響を詳細に調べるほか、春の開花予想の精度を向上するのに役立てる。

サクラは夏につぼみが形成された後、秋には成長を一時的に止める休眠状態に入る。真冬に十分な低温にさらされて休眠から目覚め、春に向けて暖かくなるにつれて成長して開花する。

研究グループはソメイヨシノの遺伝子のうち、約3万種について大規模調査を実施した。札幌市、茨城県つくば市、福岡市の3地点で遺伝子の発現量と気温の関係を1カ月ごとに1年間にわたって調べた。その結果、春夏秋冬、初夏と季節に応じて異なる遺伝子の発現パターンを示すことが分かった。

さらに、休眠からの目覚めを予測する計算モデルの開発に向けて、目覚めに関わるとされる「DAM遺伝子」6種類を調べた。このうち、「DAM4」と呼ぶ遺伝子が休眠からの目覚めを抑えており、気温セ氏10.1度未満の日が積算で61日以上になると発現量が減少して目覚める状態になると分かった。

気温から目覚めの日を予測するモデルを作り、1990〜2020年の札幌、つくば、福岡の3市の気温を当てはめた。休眠から目覚める日は10年ごとに約2日ずつ遅れていることが分かった。地球温暖化で秋から冬にかけて、低温の日が少ないことが影響しているとみられる。このモデルを活用すれば温暖化のサクラへの影響を、生物学的に明らかにできる可能性がある。

サクラの開花は目視で確認できるが、休眠からの目覚めの時期を正確に知るのはこれまで難しかった。目覚めの日から開花までは積算温度で予想できるため、目覚めの日が正確に分かれば、開花予想の精度を向上できる可能性がある。

サクラと同じバラ科であるモモやリンゴなどの栽培への応用も想定する。今後はさらに多くのサンプルを集めて分析して精度を向上し、実用化を目指す。

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