諏訪理さん(47)と米田あゆさん(29)は宇宙飛行士の候補者に選ばれたあと、およそ1年半にわたる基礎訓練を経て、10月21日、正式に宇宙飛行士に認定されました。

2人はき25日、NHKのインタビューに応じ、訓練をともにしてきたお互いの印象について諏訪さんは「米田さんは、訓練中つらい時もいつも笑顔で勇気づけられた。自分とは違う視点から物事を見ていて、学ぶことが多かった」と語りました。

一方、米田さんは「諏訪さんは冷静で落ち着いているが、張り詰めた空気の時はユーモアがある発言で場を一瞬で明るくするような一面もあり、助けられた」と振り返りました。

2人は今後、国際的な月探査計画に参加して日本人として初めて月面に降り立つことも期待されています。

諏訪さんは「宇宙開発は長い歴史の積み重ねの上にあり、それを発展させようというところに来ている。このタスキを次世代に引き渡して、さらに発展させる土壌を作るお手伝いをしたい」と語りました。

一方、月に行ったらやりたいことについて米田さんは「これまで月で話された言葉はおそらく英語だと思う。日本人宇宙飛行士が月面に行き、新しい言語として日本語が話されて、日本人の皆様にメッセージが伝わるのはすごく楽しみでわくわくする」と話していました。

1年半にわたる基礎訓練

諏訪理さんと米田あゆさんは10月、正式に宇宙飛行士に認定されるまでおよそ1年半にわたって基礎訓練を受けてきました。

JAXA=宇宙航空研究開発機構によりますと、基礎訓練は4つの分野からなり、宇宙実験に必要な科学的な知識のほか、航空機の操縦やサバイバル技術など、さまざまな技能の習得が求められます。

このうち「サバイバル訓練」は、宇宙飛行士が地球に帰還する際、宇宙船が想定外の場所に不時着したことを想定し、陸上自衛隊などの協力のもとで行われました。

諏訪さんと米田さんはそれぞれ、5人ほどのメンバーを率いる分隊長となり、地図とコンパスを頼りに森の中を夜通し歩くことで、想定外の場所から生還するための知識や技能、リーダーシップなどを養成しました。

また「基礎地質学訓練」は、長野と群馬の県境にある浅間山などで行われました。

将来、宇宙飛行士が月や惑星に降り立ち探査することを想定し、岩石の採取や地質の観察など、現地の状況を詳しく調べるための訓練を受けました。

このほかにも、低酸素の状態に耐えて計算問題を解く訓練や、無重力に近い環境で体をコントロールする訓練などさまざま基礎訓練を積み重ね、10月21日、正式に宇宙飛行士に認定されました。

「アルテミス計画」とは

「アルテミス計画」はアメリカが主導する国際月探査プロジェクトです。

1960年代から70年代、人類を月面に送り込んだ「アポロ計画」以来、およそ半世紀ぶりに月に宇宙飛行士を送り込むことを目指しています。

現在の計画では2025年9月以降に宇宙飛行士を乗せた宇宙船が月の周りを周回する試験飛行を行い、2026年9月以降に宇宙飛行士が月面に降り立つミッションを実施することを目標としています。

その後も継続的に宇宙飛行士による月の探査が行われる予定で、月面での長期滞在や、月を周回する新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」の建設も予定されています。

アルテミス計画は国際協力のもと進められていて、日本やヨーロッパなども参加し、ゲートウェイの建設やプロジェクトに必要な機材の開発に協力することになっています。

日本はことし4月、アメリカ側と月面探査に関する取り決めに署名し、この中でNASAが日本人宇宙飛行士に2回にわたり月面に着陸する機会を提供し、探査活動を行う一方で、日本側はJAXA=宇宙航空研究開発機構がトヨタ自動車などとともに開発を進めている有人月面探査車の開発や運用にかかる費用などを負担して月面探査に協力することなどが盛り込まれました。

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