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8人がつくる「いのち」テーマのパビリオン

大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」

この「いのち」というテーマに沿って、石黒教授を含め、日本を代表する8人のプロデューサーがそれぞれパビリオンをつくる。

建設場所は、大阪・夢洲の会場のシンボルとなる「大屋根リング」の内側。

会場の中心部に建ち並ぶ、注目のコンテンツだ。

それぞれのパビリオンの建設場所

水が流れるパビリオン

こちらが、石黒教授のパビリオンの外観だ。

完成を間近に控えたことし9月、取材した。

パビリオンは地上2階建てで、外壁の上を常に水が循環する構造になっている。

黒い外壁の上を水が連なって流れ落ちる様子が幻想的な雰囲気を醸し出す。

この日、初めてパビリオンを訪れた石黒教授は水に込めた意義をこう説明した。

大阪大学 石黒浩 教授
「水は『命の起源』なので、今回の万博の重要なキーワードです。大阪は水の都ですし、会場の夢洲も水の上にあります。水を通じて大阪も感じてもらいたいですし、命の未来をちゃんと感じてもらうことができたらと思います」

過去には本人そっくりの“イシグロイド”も

これまでさまざまなヒト型ロボット=アンドロイドを開発してきた石黒教授。

自身にそっくりなアンドロイドや、新一万円札に描かれた渋沢栄一のアンドロイドなどで世間を驚かせてきた。

左が本人、右がイシグロイド

万博ではどのような技術で私たちを驚かせてくれるのか。

詳しい展示内容は明らかにできないということだが、交渉の結果、後日、展示の一部を紹介してくれることになった。

ヒトかアンドロイドか見分けがつかなくなる?

そして10月1日。

私たちが向かったのは、京都・精華町にある研究施設。

部屋に入ると、10体ほどのアンドロイドの開発が進められていた。

まず紹介してくれたのは、テーブルを挟んで向き合って座る2体のアンドロイドだ。

プログラムどおり自動で動く仕組みで、2体のアンドロイドが掛け合いをするように顔の表情や腕の位置などを変化させる。

人間らしい動きに近づけるため、可動箇所にはモーターは内蔵されておらず、空気を流すことで動かす方向や範囲などを調整しているという。

そのため、力を抜いたスムーズな動きが再現でき、ロボット特有のぎこちなさがない。

まるで、時間を忘れておしゃべりに夢中になる2人の子どものように見えてくる。

さらに奥に進むと、身長170センチほどの“大人”のアンドロイドが立っていた。

こちらが、体をひねる機能が加わった最新型のアンドロイドだ。

動画はこちらから

万博の開幕まで半年となり、今回、初めて見せてもらうことができた。

これまでは、腰やひざの部分に自由度がなく、上半身を水平に回転させることしかできなかったという。

しかし、全身におよそ60の可動箇所をつくり、それらの動きを組み合わせることで、声をかけられて振り向く時のような、人間らしいしぐさが再現できたのだ。

大阪大学 石黒浩 教授
「体をひねって振り返るというのは、すごく人間らしい動きの1つの特徴です。私たちは今までのロボットではあまり注目されてこなかった、人間らしい細かい表現に注意しながら開発しています。アンドロイドか人間か、わからないぐらいの存在になるような気がします」

パビリオンでは、この人間らしい動きにさらに磨きをかけ、およそ20体のアンドロイドを学校や職場、病院など、さまざまなシーンに配置する。

人間とアンドロイドがともに生きる未来空間を体験してもらい、未来をどうつくっていくのか考えてもらうのがねらいだ。

みんなで未来を考える万博に

この日の午後、石黒教授は、自身が卒業した高校の生徒に万博に対するみずからの思いを伝える講演を行った。

子どもたちに呼びかけたのは、今回の万博を「未来に憧れる万博」ではなく、「みんなで未来を考える万博」にしたいというメッセージだった。

大阪大学 石黒浩 教授
「1970年の大阪万博では、今、私たちが使っている携帯電話などが展示され、技術者やいろいろな人に夢を与えました。ただ、当時は、物質的に豊かになることが多くの人の目標でしたが、今では生物の遺伝子やエネルギーをめぐる技術などが大きく進歩し、50年前と比べたら“神の技術”を手にしたとも言えます。この巨大なテクノロジーの力を手に入れた人間の責任として、未来を自分たちで考えてつくっていかないといけません。それを考えるのが万博だということです」

講演のあと、話を聞いた生徒の1人はアンドロイドが私たちの生活空間にとけ込んだ未来への思いをこう語った。

「人間とアンドロイドが共存することで、今よりもっといい日本や世界になると思いました」

1000年後の未来を見据えて

万博では、50年後、テクノロジーで進化した人間の生活やアンドロイドに宿る「いのち」のあり方を提示するとともに、1000年後の未来の人間を芸術的に表現するという。

石黒教授は、多様な価値観などを大切にしながら、どのような未来をつくっていけばよいのか、今を生きる私たち人類が責任をもって考えてほしいと訴える。

大阪大学 石黒浩 教授
「万博を開催する一番大きな意義は、未来についてみんなで考えることです。想像力を豊かにして自分たちで未来をつくっていくきっかけにすることです。みんなに喜んでもらえる、驚いてもらえるような、そんなパビリオンにすることができればいいなと思ってます」

(10月22日「ほっと関西」で放送。10月28日「列島ニュース」で放送予定)

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