東京医科歯科大学の研究チームは、ヒトの皮膚に近い組織をマウスの体表に作ることに成功した。今後、ブタなど大きな動物でヒトの皮膚を作製できるようにして、重度のやけどを負った患者への移植向けに実用化を目指す。

長野寿人非常勤講師、水野直彬助教、中内啓光特別栄誉教授らの研究成果で英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に29日、掲載された。

やけどや外傷の治療用には皮膚の最も外側にあたる表皮を培養したシートが実用化している。ただ、表皮の内側にある「真皮」は含まず、深い傷や重度のやけどで真皮を失った患者の治療は難しい。毛などの器官もなく皮膚の機能を十分に再現できていない。他人の皮膚は移植しても拒絶されてしまい定着しにくいのが課題だ。

研究チームはマウスの受精卵のうち、表皮の成長に関わる遺伝子の機能をゲノム編集技術で失わせた。この受精卵が成長した胎児にヒトの表皮のもとになる幹細胞を加えると、表皮がヒトの細胞に置き換わった。

皮膚内では表皮と真皮が強くくっつき、真皮ごと移植しやすいとみている。マウス同士の実験では、別のマウスに皮膚を移植しても拒絶反応は起きず、毛も生えた。マウスから得られる皮膚は小さくてヒトへの移植には向かないため、今後ブタの体表でヒトの皮膚を作る方法を研究する。

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