巣を作るニホンミツバチ。ハチミツや蜜蠟(みつろう)から農薬を検出した=小松貴氏撮影

国立環境研究所は、水田や畑から離れた都市部でも、ミツバチの巣に農薬成分が多く含まれていることを明らかにした。害虫を駆除する殺虫剤や除草剤と同じ成分も検出した。生態系の維持に向けて、安全な生息地帯の特定に生かす。

「ハナバチ」の一種に分類されるミツバチは、花粉を運んで生態系の維持や農作物の栽培にも貢献している。近年は個体数が減少しているとされ、農薬が一因だと指摘する声もあった。

土地の利用形態は森林、水田や果樹園、人が居住する都市部など広範にわたる。研究グループは、2021年の夏から秋にかけて市民の参加を募り、青森県から鹿児島県まで全国175地点のハチの巣を対象に農薬との関係を大規模に調査した。

日本在来種の「ニホンミツバチ」の巣の周辺半径1キロメートルを農地や森林など利用形態に応じて14に分類して調べた。1年以内に作った新しい巣を調べ、日本で農薬として多く使われる16種類の化合物の濃度などを分析した。

農薬の影響が低いと考えられていた都市部の巣から4種類の化合物を検出した。そのうち3種類が害虫の駆除剤として使われている。

水田や果樹園近くの巣では6種類の化合物が検出され、農業への土地利用が多いほど濃度も高くなる傾向にあった。水田では08年から使用禁止となった殺虫剤「ダイアジノン」が多量に検出され、長期間残留している可能性があることが分かった。

農薬が少なかったのは畑の近くの巣だ。栽培作物が多様で、異なる農薬を使うため、濃度が低く検出できなかった可能性がある。森林も農薬にさらされるリスクは低かった。

坂本佳子主任研究員は「都市部での農薬検出の原因を究明しつつ、保全策を提言していきたい」と語る。農薬の一部は、ハチに作用して病気にかかるリスクを高める可能性が指摘されている。今後も、ニホンミツバチを対象に調査を進める。

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