タリウムを摂取すると腎臓の髄質外層にカルシウム結晶が形成される=東京科学大学提供

東京科学大学などの研究グループは、毒物のタリウムの摂取によって腎臓の「髄質外層」という部分に結石ができることを明らかにした。タリウム中毒には目立った所見が少なく、医師の診断で見つけにくかった。タリウムを利用した犯罪や誤食の早期発見につながる可能性がある。

タリウムは人体に強い毒性があり、重症の場合は死亡する。殺人や殺人未遂事件の道具に度々使われてきた。中毒時の所見が脱毛の他にはなく、「通常の検査で検出できないので見逃されがち」(科学大の鵜沼香奈教授)という。

研究グループはラットにタリウムを投与して腎臓の変化を調べ、髄質外層と呼ばれる部分に結石ができることを見いだした。

腎臓は尿の元である「原尿」から必要な成分を再吸収する役割がある。タリウムを摂取すると、原尿内のタリウムが再吸収されて腎臓の機能が低下し、本来再吸収されるべきカルシウムが再吸収されなくなる。カルシウムは髄質外層に蓄積し続け、結石となり、重度の急性腎障害を引き起こすという。

腎臓の髄質外層には通常、結石ができない。そのため急性腎障害の患者の髄質外層に結石が見つかった場合、タリウム中毒の疑いが強いことになる。タリウムの再吸収を阻害する薬剤の投与により、症状の緩和が期待できるという。研究グループは今後腎障害のメカニズムをさらに詳しく調べるとともに、医療での活用を目指す。

獨協医科大学や量子科学技術研究開発機構との共同成果で、独学術誌「アーカイブス・オブ・トキシコロジー」に掲載された。

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