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再エネ 導入ペースはピーク時の半分程度に
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再エネ 拡大のカギは新技術
エネルギー基本計画 将来の電源構成は
日本の電力政策の骨格となる「エネルギー基本計画」は、経済産業省の審議会で3年ごとの見直しに向けた議論が進められています。
この中で焦点のひとつとなっている将来の電源構成について、経済産業省が、いまの計画で2030年度に「36%から38%」としている再生可能エネルギーの割合を2040年度の時点ではさらに引き上げ、初めて化石燃料による火力を上回る最大の電源とするシナリオを示す方向で検討していることがわかりました。
このシナリオでは、2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという政府の目標に沿って、再生可能エネルギーの導入を拡大していく想定です。
ただ、各電源の将来的なコストや技術革新の進み具合などは現段階では見通しづらいことも踏まえ、複数のシナリオで異なる電源構成を示す異例の対応も検討しています。
経済産業省は今後、原子力発電の位置づけなども含めて、大詰めの議論を行った上で来月中には素案をとりまとめることにしています。
再エネ 導入ペースはピーク時の半分程度に
再生可能エネルギーのさらなる拡大に向けては、新たな技術の実用化がカギとなります。
2022年度の時点ですべての電源のうち、再生可能エネルギーによる発電量が占める割合は21.7%と、固定価格で買い取る制度が開始される前の2011年度と比べると2倍程度に増えています。
ただ、再生可能エネルギーを新たに導入するペースは、ピークだった2014年度の半分程度に落ち込んでいます。
その背景のひとつとして指摘されているのが、再生可能エネルギーによる発電設備を設置するのに適した土地が国内では限られる点です。
太陽光発電では、現在、主流となっている「シリコン型太陽電池」は重みがあり、一定の広さがある平地を中心に設置されてきましたが、普及が進むにつれて適した土地は減ってきています。
また風力発電では
▽陸上は、安定して強い風が吹く場所が沿岸部や山間地に集中し設置に適した場所が限られるほか
▽海上も現在、主流となっている風車の土台を海底に固定する「着床式」と呼ばれるタイプに適した遠浅の海域は国内では限られます。
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再エネ 拡大のカギは新技術
こうした課題の解決策として期待されているのが「ペロブスカイト太陽電池」と「浮体式」洋上風力です。
ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽く折り曲げられるのが特徴で、建物の壁面などにも設置できます。
また、主な原料のヨウ素は国内で調達できることから、サプライチェーンを海外に依存する必要がなく、経済安全保障の観点からもメリットがあると指摘されています。
一方、「浮体式」洋上風力は、風車の土台を海底に固定するのではなく、海に浮かべるタイプで、遠浅ではない海域でも設置できます。
陸地から離れた海域でも設置できることから、風車を大型化し1基あたりの発電量を大きくすることもできます。
政府は、浮体式洋上風力をEEZ=排他的経済水域にも設置できるようにするため、来年の通常国会に「再エネ海域利用法」の改正案の提出を予定しています。
ただ、いずれの技術もまだ実証試験の段階で、性能の向上や量産技術の確立、コストの低減など実用化に向けては課題もあります。
政府は資金面や人材育成などで実用化を後押ししていて、新たなエネルギー基本計画では、こうした新技術の導入目標を盛り込むことも検討しています。
専門家「再エネをフルに使う時代がやってきた」
エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長は、エネルギー基本計画の見直しの議論について「ロシアによるウクライナ侵攻で、化石燃料のコストが上昇するという問題がはっきりしたことが今回の大きな特徴だ。太陽光や風力は、ランニングコスト自体はほぼかからないため、いまこそ再生可能エネルギーをフルに使う時代がやってきた」と指摘しています。
その上で、再生可能エネルギーの普及に向けては「太陽光では、メガソーラーはあまり発展の余地がないが、屋根の上はまだまだあるので、ペロブスカイトが普及した場合には伸びる可能性がある。また風力で言うと洋上風力が一番伸びしろがあると思うが、着工から発電まで8年ほどかかるのが問題で、これを短くするのがポイントだ」と述べ、ペロブスカイト太陽電池と洋上風力発電の普及がカギになるという考えを示しました。
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