海洋研究開発機構などは、二酸化炭素(CO2)以外の温暖化ガスの排出抑制が、地球の気温上昇を抑えるのに貢献したことを解明した。21世紀の初頭ごろは温暖化の進行が遅くなったとされるが、メタンやフロンガスの削減による効果が全体の減速に約24%影響していた。温暖化対策には様々な温暖化ガスの排出を抑制することが重要だと指摘する。
1998〜2012年は、世界の平均地表気温の上昇速度が遅くなったことが知られている。この傾向は「地球温暖化の停滞」や「ハイエイタス」とも呼ばれる。ただ、どのような人間の活動や自然現象の要因が、鈍化にどれくらい影響したのか詳しく分かっていなかった。
研究チームは海洋機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使い、観測データと気候モデルから、温暖化が減速した1998〜2012年と1951〜2012年を比べた。CO2やメタンの排出といった人間の活動による要因と、火山活動のような自然現象が温暖化にどの程度影響したかを推定した。
すると温暖化が減速した期間に、南米ペルー沖の海面水温が下がる「ラニーニャ現象」による冷却効果が与えた影響は約50%で、太陽活動の低下が約26%だった。メタンやフロンガスなどの排出を抑制した効果は約24%だった。
海洋機構の蘇宣銘特任研究員は「CO2以外の温暖化ガス排出量の削減も、地球温暖化対策に重要だと再認識されたのには意味がある」と話す。
研究チームは、温暖化が減速した期間、農業や化石燃料の採掘によるメタンの排出が抑制された影響が出たとみている。またオゾン層を壊すフロンガスなどはモントリオール議定書によって規制された効果が出たと予想している。
今回の手法は、2023年以降の異常な高温の分析や、予測にも使えると期待している。観測データを活用してエルニーニョ現象などの自然要因による不確実性を減らしていく。「何をどれだけ減らせばどれぐらいの効果があるか、という議論に貢献できる」(蘇特任研究員)
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