理化学研究所の井上治久チームリーダーらは、脳の約半分を占めるグリア細胞の一種をiPS細胞から効率良く作る技術を開発した。従来よりも高純度に作製でき、大規模な実験や分析に使える。認知症やALS(筋萎縮性側索硬化症)の病態解明や創薬の研究に役立つ。
ヒトの脳には栄養の補給や免疫機能を担うグリア細胞がある。その一種であるアストロサイトは神経活動の調節など様々な機能を持つ。アルツハイマー病や脳卒中の患者の脳では神経細胞に加えてアストロサイトでも異常が見つかり、治療の標的として注目されている。
井上氏らはヒトのiPS細胞からアストロサイトを作る技術を改良し、従来は8割程度だった純度を9割超に高めた。培養液の成分や細胞数などを工夫した。アストロサイトに異常が生じる難病患者のiPS細胞から作ると、細胞の形態や病変を再現できた。
高純度なアストロサイトを作れば遺伝子の働きや薬剤の効果を調べる実験に使える。井上氏は「新薬の開発費や人件費などのコスト削減にもつながる」とみる。
アストロサイトは脳内の老廃物を除去する機能のほか、睡眠のリズムなどを担う体内時計など脳の様々な機能への関与が示唆されており、研究の重要性が高まっている。研究チームは今回の技術がアストロサイトの機能解明にも役立つと見込む。
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