明治大学発スタートアップのポル・メド・テック(川崎市)は25日、ほかの動物に移植しても拒絶反応が起きないように遺伝子を改変したブタの腎臓をサルに移植したと発表した。国内初の臨床応用に向けた実験で、腎臓病に苦しむ患者への移植技術の確立を目指す。患者への移植は数年後に実現する可能性がある。

サルへの移植に用いたブタを育てた代理母ブタ=ポル・メド・テック提供

移植は24日に鹿児島大学、京都府立医科大学、ポルメド社などが共同実施した。カニクイザルの腎臓を2つとも取り除き、ポルメド社が育成した月齢約3カ月のブタの腎臓1個を移植した。移植後、サルの排せつ器官から尿が出るのを確認した。移植した腎臓が機能しているとみられる。

移植したサルに免疫抑制剤などの薬を投与しながら体調の経過を確認する。今後数カ月間で最大8頭のサルに同様の移植を実施し、患者への移植の具体的な手法や薬の投与方法、適切な体調管理の方法の確立を目指す。

研究代表者で移植手術を執刀した鹿児島大の佐原寿史教授は「サルへの移植研究を今後着実に進め、異種移植の実用化につなげたい」とコメントした。

腎臓の機能が落ちた患者には他人の腎臓の移植が治療の選択肢になる。ただ臓器の提供者(ドナー)は不足しており、国内で腎臓移植を受けるには約15年待つ必要がある。人工透析でも腎機能を肩代わりできるが患者の体に大きな負担がかかる上、生涯続ける必要もある。

動物の臓器を人に移植する「異種移植」はドナー不足の解決策になると期待される。ブタは人と臓器の大きさが近いため移植に向く。通常のブタ臓器を移植すると免疫による強い拒絶反応が起きてしまうが、遺伝子を改変したブタを使えば拒絶を抑えられる。国内での実施例はまだない。

異種移植を巡っては米国で既に臨床応用が始まっている。3月には米マサチューセッツ総合病院で腎臓病患者が遺伝子改変ブタの腎臓の移植を受けた。患者は移植後に退院し、体調も良好だったが、2カ月後に持病である心臓病の悪化で亡くなった。

ポルメド社は米国での移植に用いられたブタのクローンを誕生させ、今回サルヘの移植に使った。米国の実施例からヒトに移植しても強い拒絶反応が起きないと分かっており、臨床応用しやすいとみている。

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