九州大学の椿俊太郎准教授らは、食品廃棄物や間伐後に残った枝などのバイオマスを熱で分解して利用しやすくする手法を開発した。電磁波の一種のマイクロ波を制御することで内部まで効率よく加熱できる。バイオマスから有用な炭素材料を得るための熱分解の効率を改善できると期待される。
バイオマスは直接燃やして発電に使ったり、熱分解して機能性素材を作ったりする用途で利用が期待されている。熱分解すると水素や一酸化炭素などの合成ガスや、炭素を長期間貯蔵したり燃料電池の電極材料に使えたりする固体の炭素材料などが得られる。ただ、主成分の木材は熱伝導率が低いため、加熱前に粉末にする必要があるなどコストがかかる。
マイクロ波を用いると、バイオマスを粉末にしないでも急速に加熱できる。ただ、熱分解が進むとバイオマスの固体成分の表面でマイクロ波が反射し、内部まで届きにくい課題があった。
椿准教授らはマイクロ波を精密に制御して、2段階でバイオマスを加熱する熱分解炉を開発した。はじめに電子レンジと同じようにバイオマスを加熱して気体と液体、固体に分離した。さらにIH調理器と同様の原理でマイクロ波を固体成分の内部まで届くように制御して全体を加熱した。新しい熱分解炉を使うと、消費電力を抑えてバイオマスを加熱できる。
間伐で残った枝などのバイオマスは、季節により生じる量や場所が変わるため、大型の処理施設では稼働率の低い時期ができる。今後はバイオマスの発生状況に合わせて必要な場所に移動できる装置の開発を目指し、研究を進めるという。
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