東京大学の相田卓三卓越教授らは構造の違いがわずかでそっくりなDNA同士を分離できる技術を開発した。従来の分離技術よりも純度を高めやすい。生物の持つ遺伝子はわずかに変化するだけでがんなどの様々な病気に関わる場合がある。こうした遺伝子を分離できれば研究しやすくなる。
理化学研究所との共同研究で成果をまとめた論文が英科学誌ネイチャーに掲載された。
生物の遺伝子の本体であるDNAは塩基という4種類の物質が連なってできている。ヒトのゲノム(全遺伝情報)は約30億個の塩基対からなり、うち1対が変わるだけで発がんにつながることもある。
生物の組織には変異を持つDNAと正常なDNAが混在し、一方のみを取り出しづらい。変異がわずかだと物理的な性質が似るため分離も難しかった。うまく分離できれば、病気に関わる詳しい仕組みを研究しやすくなる。
研究チームは構造がわずかに異なる高分子と「硫酸アンモニウム」という物質の溶液をガラスに垂らすと、高分子が種類ごとに同心円状に分離することを発見した。硫酸アンモニウムはガラス面上に結晶をつくる。高分子の構造が違うと結晶とのなじみやすさも異なることなどから分離が起きるとみている。
この現象を応用し、構造の似たDNAも同様に分離できることを突き止めた。分離後、目的のDNAを抽出して分離を繰り返せば純度を高められる。東大がこの分離と抽出工程に関して特許を出願した。
がんとの関連が知られている「BRAF」という遺伝子で実証した。遺伝子の一部にあたる30塩基の配列を取り出し、1塩基だけ変異した配列を同量混ぜて分離させた。分離作業を3回繰り返すと、1塩基だけ変異したものの純度を97%まで高められた。回数を増やせばさらに高められるという。
従来の分離方法は、作業を10回程度繰り返しても純度を十分高められない場合があった。相田卓越教授は「DNAを分離して純度を高めるのは研究で正しい解釈を得るために必須だ。今後は作業の自動化にも取り組みたい」と話した。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。