鹿児島湾(錦江湾)で、見慣れない魚がとれた――。釣り人らの間で5年あまり前から話題になってきた「怪魚」がいる。
大きな口、しま模様と斑点が交ざったような独特の模様。高級魚「クエ」と、成長が早い「タマカイ」の人工交雑魚だ。「クエタマ」「タマクエ」と呼ばれる。
遊漁船「海晴丸」の中田清治船長(58)によると、当初釣れていたものは1キロほどだったが、今は7~8キロほどのものが釣れる。釣れる場所も湾口や湾外にまで広がったという。
これらは、養殖のいけすから台風などの際に逃げ出したとみられている。心配されるのは自然界への影響だ。
国内では、水産会社のイヨスイ(愛媛県宇和島市)と近畿大学がそれぞれ養殖に成功し、販売している。近畿大によると、錦江湾では養殖をしていないが、養殖の網を2重にするなどの対策をとったという。
イヨスイの担当者は、錦江湾のものが「どこから逃げたかはわからない」としつつ、自然繁殖の可能性については「F1(交雑魚)同士で子ができた例はない」と説明する。
鹿児島大学の本村浩之教授(魚類分類学)は「生きものは想定外のことが起きるので完璧にはわからない」と断ったうえで、繁殖しない可能性が高いとみる。「大食漢なので、いることは問題だが、(寿命と推定される)何十年かたてばいなくなる」
本村さんがむしろ問題として挙げたのは、国内に同じ種がいる魚の養殖や放流だ。もともと地域にいる魚と繁殖すれば、数百万年、数千万年の時をかけて築き上げてきた固有の遺伝的な特徴が失われる恐れがある。
「凶暴な外来種として知られるブラックバスやブルーギルに対して、意識が薄いように思う」と指摘した。(杉浦奈実)
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