寒帯に存在するスウェーデンの湖の水を調べた=マルセル・ハフシュミット撮影

スウェーデンのリンショーピング大学や独ヘルムホルツ環境研究センターは、川や湖が大量の炭素を吸収する仕組みを解明した。淡水の中では炭素が特殊な化学構造をつくるために二酸化炭素(CO2)として大気中に放出されにくくなっていた。研究成果は英科学誌ネイチャーに掲載された。

陸上の植物や動物の死骸は炭素を含む有機物からできている。川に入ると、有機物として水に溶け込む。川や湖の水では有機物を分解しにくく、大量の炭素を吸収するとされてきたが、詳しい仕組みは分かっていなかった。

南米を流れるアマゾン川とスウェーデンの湖の水が含む有機物を調べた。

通常、生物を構成する有機物では炭素原子が水素原子や酸素原子と結合する。川や湖の水に含まれている有機物を解析すると、1つの炭素原子が、3個の炭素原子、1個の酸素原子とそれぞれ結びつく特殊な構造だった。この構造は安定していて、CO2などに変わりにくく、水中にとどまりやすくなるという。

川が氾濫し陸からの有機物が増えたアマゾン川=リンショーピング大のノルベルト・ヘルトコルン氏提供

研究チームは世界の淡水で同じ現象が起きていると推測する。リンショーピング大のノルベルト・ヘルトコルン氏は「(水中に溶けている有機物は)未知のブラックボックスであるという科学界の認識を変える発見だ」と強調する。

研究成果は地球規模の炭素循環の解明につながる。ヘルムホルツ環境研究センターのシユ・リー氏は「自然界の炭素吸収源を測定する方法や、吸収量を増やす方法の開発に役立つ」として、温暖化対策への貢献を期待する。

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