技術イベントに合わせメディアの質疑に応えるグーグルのスンダー・ピチャイCEO(米カリフォルニア州の本社)

【シリコンバレー=渡辺直樹】米グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は15日、生成AI(人工知能)の規制について「世界的な枠組みが必要になる」との見方を示した。欧州連合(EU)や日本など世界各地で独自にAIを規制する動きが広がる中、世界共通の基準づくりを進め、技術革新と安全のバランスを重視すべきだと述べた。

14日から始まった最新技術を発表するイベントに合わせ、米西部カリフォルニア州の本社で世界各国のメディアの質疑に応じた。

グーグルは対話型AI「Chat(チャット)GPT」を開発した米オープンAIとAIの性能競争を繰り広げている。一方、進化に伴い偽情報の拡散、プライバシーや著作権侵害といった負の側面を抱えている。EUはAIの包括規制法案を可決し、日本でも新法の検討が進む。

ピチャイ氏はこうした各国の動きを評価した上、「バランスが重要だ」と訴えた。AIがもたらす負の側面を規制によって軽減しつつ、あくまで技術革新による経済的恩恵を生かしていくべきだと主張した。

インターネットが世界的に普及した歴史に触れ、「ともに基準をつくり、活用する方法を探ってきた手法を、AIにも適用できるようにしたい」と話した。

2024年は米大統領選挙やインドの総選挙を控える。生成AIを使った偽情報が民主主義を脅かす危険性も指摘されている。ピチャイ氏は「公正な選挙を実現することは会社の最優先事項として(対策に)投資してきた。慎重かつ楽観的にみている」と自信を見せた。

具体的には検索や動画共有のユーチューブ、生成AIの各分野に専門のチームを設け、「ディープフェイク」と呼ばれる偽動画などに先手を打って対策してきたことを紹介した。技術発表会では「Synth ID」と呼び、動画にデータを埋め込んでAI製であることを識別する新技術も発表した。

生成AIをめぐりチャットGPTを開発するオープンAIとの競争が激化していることについては「革新が起こり、私たちの背中を押していくことは、世界にとってもよいことだ」と述べた。

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