群馬県立自然史博物館は16日、群馬県と栃木県で発掘されたふたつのイルカの化石を調べたところ、いずれも淡水に生息するヨウスコウカワイルカの新種だと発表した。1100万年前の地層からみつかった群馬産は、ヨウスコウカワイルカの化石としては世界最古とみられるという。学芸員の木村敏之さんは「起源や進化を解明するうえで重要な発見」といい、18日から特別展示を開く。

 ヨウスコウカワイルカはイルカとしては珍しく淡水に生息。中国・揚子江で1980年代まで生態が確認されたが、その後は絶滅したとみられるという。化石もアメリカとメキシコでしか見つかっていなかった。

 今回新種となった化石は、日本に由来する意味を込めて、学名「エオリポテス ジャポニクス」と名づけられた。

 群馬県産の化石は、安中市在住の中島一さん(72)が1999年5月、碓氷川沿いで見つけた。火山灰に挟まれた約1100万年前の地層から見つかり、年代を特定できた。

 栃木県産の化石は2012年3月、当時中3だった浜田幸典さんが鬼怒川沿いで発掘。栃木県立博物館に寄贈していた。

 群馬と栃木産のふたつの化石はいずれもイルカの頭の部分。自然史博物館が、くちばしや鼻がよい形で残っている栃木県産を借りて、両方を研究したところ、くちばしの骨の付け根にくびれがみられることや、頭頂部の盛り上がりが特徴的な形をしていることなどからヨウスコウカワイルカの新種と判断した。すでに今年3月の学術誌に論文を発表している。

 ヨウスコウカワイルカが淡水環境に生息していたことをふまえ、自然史博物館の真鍋真特別館長は「海から川にイルカがどう進出していったか。海のない群馬県で発見された化石から思いをはせてみては」と話す。

 群馬県立自然史博物館は18日から6月30日まで特別展示を開く。栃木県立博物館は18日から11月4日まで紹介展示する。(高木智子)

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