中経連の水野会長は「GXに向けた道筋を付けることが重要」と強調した

中部経済連合会は20日、政府が2024年度中に策定する次期エネルギー基本計画に対する提言書をまとめた。既存の原子力発電所の活用に加え、水素やアンモニアなどの脱炭素燃料への転換を促す政策などを訴えた。中部に自動車産業が多いことを踏まえ、ハイブリッド車(HV)などの活用による脱炭素化といった需要側の取り組みも盛り込んだ。

「エネルギー安全保障やグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた道筋を付けることが重要だ」。20日に名古屋市内で開いた記者会見で、中経連の水野明久会長(中部電力相談役)はこう強調した。提言書はエネ基策定に合わせ、3年ごとに発行されている。

提言では中部特有の事情を踏まえた内容が盛り込まれた。水素やアンモニア、合成メタンなどへの転換を促す政策はその1つだ。中部電力グループの22年度の電源構成は、石炭と液化天然ガス(LNG)、石油を合わせた火力発電が65%を占める。浜岡原発(静岡県御前崎市)の稼働停止もあり、他の電力会社に比べて火力発電比率は高い。

中部電力は東京電力ホールディングスと折半出資する火力発電最大手のJERAを通し、石炭にアンモニアを混ぜて運転する実証実験を碧南火力発電所(愛知県碧南市)で進めている。アンモニアを使った発電は二酸化炭素(CO2)の排出削減につながり、脱炭素に貢献するとされている。

提言書ではこうした脱炭素燃料への転換について、「受け入れ拠点の整備に加え、需要側への支援も検討し普及を加速すべきだ」とした。記者会見に出席した勝野哲中経連副会長(中部電力会長)は、「火力発電といった既存施設を活用した(脱炭素に向けた)トランジション(移行)が重要になる」と強調した。

メーカーや家庭など、需要側に対する提言もはじめて盛り込まれた。運輸産業では、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの利用拡大による脱炭素社会への移行が強調された。自動車産業や鉄鋼業などのメーカー向けには、CO2の分離・回収技術の早期確立、合成メタンなどの活用を求めた。

次期エネルギー計画では、現行計画の期限より10年先となる40年度の電源構成目標を策定する。30年度の目標で36〜38%の電源構成となっている再生可能エネルギーの比率の引き上げなどが見込まれている。

一方で、生成AI(人工知能)の普及などで電力需要は大幅に増える見通し。中経連の勝野副会長は「(電力の)需要側と供給側が平仄(ひょうそく)を合わせてGXに取り組まねばならない」と述べた。

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