国立循環器病研究センター研究所の中岡良和部長らは難病の肺高血圧症が発症する仕組みを解明した。特定の免疫細胞が炎症を起こす物質を出すことで肺の血管の壁が厚くなり、血液の流れが悪くなっていた。治療法の開発につながる。
肺高血圧症は厚生労働省が指定する難病の一つで、国内の患者数は4000人ほどだ。心臓から肺に血液を送る肺動脈の血管が狭まって流れが悪くなり、進行すると心不全を発症して死亡する場合もある。治療には血管を拡張する薬を使うが、患者の3割程度は薬が効きにくく有効な治療法がない。
研究チームは肺高血圧症を発症するマウスを用いて、免疫細胞や炎症を起こす物質の働きを調べた。肺に集まるヘルパーT細胞と呼ばれる免疫細胞をインターロイキン6(IL-6)という物質が刺激していた。活性化した免疫細胞が血管の壁を作る細胞を増やす炎症物質を放出し、壁が厚くなった。
重症の肺高血圧症を再現したラットでIL-6を働かなくすると血管が薄くなり、血液の流れも良くなった。血管を広げる既存薬を併用すると、さらに症状が和らいだ。
これまでにIL-6を含む複数の炎症性物質が作られると肺高血圧症が重症化すると分かっている。国循の中岡部長は「複数の炎症物質ができるのを同時に止める治療法が有望だろう」とみる。研究成果は学術誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載した。
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