国際海洋法裁判所(ドイツ・ハンブルク)は21日、大気中への人為的な温室効果ガスの排出は「海洋環境汚染」にあたるとの勧告的意見を出した。気候変動の影響や、二酸化炭素(CO2)を吸収して引き起こされる海洋酸性化から海を守るため、日本を含む国連海洋法条約の締約国には「必要なあらゆる措置を講じる義務がある」と指摘した。
勧告的意見に法的拘束力はないが、権威ある決定として尊重される。地球温暖化にともなう海面上昇に直面する南太平洋のツバルなど島しょ国のグループが、気候変動に対処するうえで締約国が負う義務についての解釈を示すよう同裁判所に要請していた。
勧告的意見では船舶からの排出のみならず、陸上で排出された大気経由の温室効果ガスも海洋環境汚染に含まれると判断した。その上で、締約国には地球の平均気温の上昇幅を産業革命前から1・5度に抑える国際目標に沿う形で温室効果ガスを減らすなどの努力をする義務を負うと指摘。さらに、気候変動に対処するため脆弱(ぜいじゃく)な途上国を支援しなければならないとした。
国際海洋法裁判所は、「海の憲法」とも呼ばれる国連海洋法条約の解釈や適用に関する紛争の解決を目的に1996年に設立された。同条約には168カ国と欧州連合(EU)が加わる。気候変動について国際裁判所が勧告的意見を出したのは初めて。
ロイター通信によると、要請国の一つでカリブ海の島国アンティグア・バーブーダのブラウン首相は「不可逆的な災難の瀬戸際に私たちを追い込んだ不作為に終止符を打つものだ」と評価した。
国連の司法機関である国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)も、気候変動を食い止めるために国家がどのような義務を負うかなどについての勧告的意見の検討を続けている。【ニューヨーク八田浩輔】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。