中国のEVメーカーの多くが価格競争で赤字に沈む中、BYDは逆に8割もの増益を達成した。写真は広東省深圳市の本社地区(同社ウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手、比亜迪(BYD)の躍進が止まらない。同社は3月26日、2023年の通期決算を発表。同年の売上高は前年比42%増の6023億1500万元(約12兆6291億円)、純利益は同80.7%増の300億4000万元(約6299億円)に達し、大幅な増収増益を達成した。

BYDの祖業は電池であり、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)用の車載電池を自社で開発・生産するほか、社外にも販売している。また、スマートフォンの受託製造などのエレクトロニクス事業も手がけている。

事業分野別の業績を見ると、2023年の自動車および車載電池関連事業の売上高は4834億5300万元(約10兆1368億円)と、前年比48.9%増加。総売上高に占める比率は前年より3.7ポイント上昇し、80.3%に達した。エレクトロニクス関連事業の売上高は前年比20%増の1185億7700万元(約2兆4863億円)だった。

粗利率がテスラ超え

業績好調の最大の要因は、言うまでもなくEVとPHVの販売急増だ。BYDは2023年2月、エントリークラスの人気車種「秦PLUSシリーズ」のPHV版を10万元(約210万円)を切る価格で投入。これを皮切りに、価格水準を同じクラスのエンジン車並みに引き下げたEVやPHVを続々投入した。

それが起爆剤になり、競合他社のエンジン車から乗り換えるユーザーが続出。BYDはエンジン車の市場シェアを奪う格好で販売を伸ばし、2023年の販売台数は前年比67.8%増の302万4000台に達した。

販売拡大に伴う生産増加は、BYDに大きなスケールメリットをもたらした。決算報告書によれば、2023年の自動車関連事業の粗利率は23.0%と、前年より2.6ポイント上昇。これは自動車業界内で上位の水準であり、同年のテスラの粗利率(18.2%)を上回る。

中国の自動車市場では価格戦争が激化しており、完成車メーカーが粗利率を改善するのは容易なことではない。

BYDはEVやPHVの価格をエンジン車並みに引き下げた。写真は同社のエントリークラスPHV「秦PLUS DM-i」の2024年モデル(BYDのウェブサイトより)

にもかかわらず、BYDは率先して価格を下げると同時に、収益力を高めることにも成功した。その秘密は、同社が車載電池の部材からEV・PHVの完成車まで一貫して手がける「垂直統合型」のビジネスモデルを作り上げたことにある。

BYDは中国のEV・PHVの最大手であると同時に、車載電池でも(寧徳時代新能源科技[CATL]に次ぐ)市場シェア第2位の大手だ。完成車と電池の両方で市場のプライスリーダーの地位にあることが、高い収益力の源泉になっている。

50以上の国・地域に進出

同社は潤沢なキャッシュフローを元手に、積極的な研究開発投資を続けている。2023年の研究開発費は395億7500万元(約8298億円)に上り、前年の2.1倍に拡大。研究開発部門の人員規模は、2022年の約7万人から2023年は約10万人に増加した。

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中国の自動車市場でEV販売の伸びが鈍化するなか、BYDが次なる成長機会として注力するのが海外市場の開拓だ。中国汽車工業協会のデータによれば、同社の2023年の輸出台数は25万2000台と、前年の4.3倍に増加した。

決算報告書によれば、BYDは2023年までに(自動車大国である)日本やドイツを含む50以上の国・地域に進出した。さらにタイ、ブラジル、ウズベキスタン、ハンガリーなどに完成車工場を建設しており、一部はすでに稼働している。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は3月27日

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