カラリと香ばしく揚げられ、断面からは脂が滲み出している。その姿を見るだけで、「ごちそうだ」と思わせるメニューのひとつがとんかつだ。手間ひまをかけ、アイデアを凝らし、リーズナブルに楽しめる普段使いながらご馳走感極まる、珠玉の町のとんかつ=町かつ!! BCの姉妹メディア『おとなの週末』が町かつの名店を紹介します!

低温と高温の油でしっとり、ふんわり精肉店直営の老舗の味『川善』@三軒茶屋

『川善』上ヒレかつ定食 2050円 火入れの妙でしっとりとした揚げ上がりだ。チーズ入り、無しを選べる

 今では少なくなった町のお肉屋さん。その裏手にある階段を上った先がお目当の店だ。初代が戦後すぐに精肉店を開業し、とんかつ店を始めたのが50年近く前のこと。今では4代目となる智弘さんがその味をしかと引き継いでいる。強みはもちろん肉の仕入れ。ランチタイムには上質な国産豚を使った定食が990円~とお手頃だ。

 さらに長年通う地元ファンが推すのが「上ヒレかつ定食」で、まずは低温の油に落とし、じわじわ火を通しつつ最後は高温でカラリ。衣の中で蒸された身はしっとりとみずみずしい揚げ上がり。そこへ様々な食材をブレンドした手作りソースを絡めれば、衣の香ばしさと共に肉の風味もぐっと膨らんでくる。

 代々守り続けたとんかつは舌にも胸にも沁みる味だ。

『川善』

[住所]東京都世田谷区太子堂4-24-15 川善ビル2階
[電話]03-3421-7839
[営業時間]11時半~14時45分LO、16時半~20時15分LO
[休日]月(祝は営業し翌火休)
[交通]東急田園都市線三軒茶屋駅北口から徒歩2分

■800円で得られる最高の口福と満足 これぞ町カツの底力『とんかつ 美濃屋』@大塚

『とんかつ 美濃屋』ロースかつ定食 800円 三元豚を使用し上品なコクと甘みがほとばしる

 安くて旨い、これぞ町かつに求めるものだろう。そのお手本とも言えるのがこの定食だ。ほどよく厚みのあるロースに、山形の「はえぬき」を羽釜で炊いたご飯、そして丼にたっぷりの豚汁もついて昼も夜も税込800円というから、うれしいを超えてもはや尊い。

 店主の原さんは東十条で60年以上続く庶民派とんかつ「みのや」の3代目で、豚肉やパン粉など食材の仕入れにも実家の伝手を生かしている。

 白絞油で揚げた衣はサクッと軽やか。そこへ油から引き上げ、余熱でジャストな火入れに仕上げた身から滴る肉汁が絡みあう。

 少し奮発するならば、国産銘柄豚の特に脂のりの良い部位だけを分厚くカットした「特上ロースかつ定食」(2500円・数量限定)もあり。

『とんかつ 美濃屋』

[住所]東京都豊島区北大塚2-6-3 メゾン大塚103
[電話]03-5944-5185
[営業時間]11時半~14時半LO、17時~20時LO
[休日]日(不定休あり)
[交通]JR山手線大塚駅北口から徒歩2分

■素材と技で引き出すサクッと軽い食べ心地 住宅街に佇む名店『福長』@都立大学

『福長』ロースかつ定食 1400円(夜は1800円) 新鮮な油で揚げた衣の軽やかさを堪能

 駅から離れた住宅街に品良く佇む店がある。かつてはビジネス街で大箱の店を切り盛りしていた店主・熊木さんが夫婦でのんびりやれる場所を求めてこの地へ移転。今では町に無くてはならない存在だ。

 この道、半世紀近いベテラン熊木さんのとんかつを頬張ると、まず感じるのがきれいな油で揚げたフレッシュな香り。続いて三元豚や岩中豚のしっとりとした身から噛むほどに甘みがあふれてきた。

 脂ののったロースでも軽やかな食べ心地は、良い素材と熟練の技があればこそだろう。さらに知る人ぞ知る名物がポークソテー。実はこれ、食通で知られるタモリさんのリクエストから生まれたメニューで、バターとにんにく醤油で上質な豚の風味をストレートに表現した逸品だ。

『福長』

[住所]東京都目黒区柿の木坂2-27-17
[電話]03-3717-3147
[営業時間]11時半~13時半LO、17時半~20時半(20時LO)
[休日]火・水
[交通]東急東横線都立大学駅北口から徒歩10分

■この立地でこの価格 溶き卵にひと工夫が深い香りを生む秘訣『卯作』@新宿

『卯作』上ロースかつ定食 1600円 衣の香ばしさが山形豚の上品な旨みを引き立てる。セットにつく大根おろしとポン酢でさっぱりと食すのもいい

 「かつカレー」800円を筆頭に、昼のメニューは開業以来31年間、値上げせず(!)で、しかも使用するのは甘み豊かな山形豚。そんな新宿の良心がアルタのすぐ裏手という好立地に潜んでいた。もちろん味も太鼓判。

 「目指すのは力強い香ばしさがありつつも、胃もたれしないとんかつ」と語るのは店主の清水さん。ラードを思わせる食欲をそそる香りが膨らみながらも、小気味いい食感の衣はどこまでもライト。その秘訣とは?「衣付けに使う卵を水ではなく高脂肪の牛乳で溶くこと」。

 そうして香りに深みを持たせつつ、揚げ油はコーン油をチョイスして軽やかさも生んでいる。来てくれたお客みんなに喜んでもらいたい、そんな誠実な想いがしみじみ伝わるとんかつだ。

『卯作』

[住所]東京都新宿区新宿3-21-1 清水館3階
[電話]03-5269-8849
[営業時間]11時半~15時LO(売り切れ次第終了)、17時半~21時半(20時50分LO)
[休日]月・火
[交通]地下鉄丸ノ内線ほか新宿駅B12b出口から徒歩1分

■衣の中に潜むのはじっくり煮込んだとろふわ豚肉『どん平』@宮ノ前

『どん平』とんかつと麦とろセット定食 1500円 カリッとした衣とトロトロの豚肉、食感のコントラストも楽しみたい

 サクッと揚がった衣の中から現れるのは、とろりと柔らかな豚バラ肉。酒や醤油で6~7時間かけて煮込み、ひと晩寝かせたそれは余分な脂が抜け落ちて、あっさり軽やかな仕上がりだ。

 しかもソースでなく自家製のデミグラスで食すのも唯一無二だろう。さらに卓上の中濃ソースも合わせれば、ほのかな酸味が加わってキリッと引き締まった味わいに。

 これを生んだのが先代のおやじさん。妹の嫁ぎ先が「浅草むぎとろ」だった縁もあり、とろろ汁付きのセットも定番だ。

 さらにもうひとつのオリジナルが「炎の酒鍋」。日本酒を張った鍋に火を付けファイヤー!煮切った酒で豚しゃぶを楽しんでから、次はダシを注いで寄せ鍋に。とんかつと鍋、昭和から受け継いだ独自の味は今も健在だ。

『どん平』

[住所]東京都荒川区西尾久2-2-5
[電話]03-3893-8982
[営業時間]11時~13時半LO(売り切れ次第終了)、17時半~21時
[休日]日・祝
[交通]東京さくらトラム宮ノ前駅から徒歩2分

『おとなの週末』/2024年3月号より転載
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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