2024年5月、事業用トラックが関係する重大事故が相次いで発生した。さらに、2023の交通事故統計によるとトラックの「飲酒運転人身事故」まで急増している。全日本トラック協会(全ト協)は「総合安全プラン2025」で、重大事故や飲酒運転の数値目標を定めているが、達成が困難な状況になりつつある。

 全ト協は傘下の都道府県トラック協会に交通事故防止を求めるとともに、機関紙「広報とらっく」の号外を発行して安全対策徹底を呼び掛けた。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図/公益社団法人 全日本トラック協会

トラックの重大事故・飲酒運転が急増

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 2024年5月、事業用トラックが第1当事者(加害者)となる重大な交通事故が相次いで発生した。

 5月6日には、群馬県内の国道において、事業用トラックが対向車線にはみ出し、乗用車2台と衝突し3人が死亡する事故が発生。14日には、埼玉県内の首都高速道路5号池袋線において、渋滞している車両の最後尾に事業用トラックが突っ込み、3人が死亡する追突事故が発生した。

 どちらの事故原因も現在調査中ではあるものの、産業活動や国民生活に不可欠な物流を担う事業用トラックが第1当事者となる重大事故が相次いだことで、これまでに培われてきた運送業界の社会的信頼性も一気に損なわれるだろう。

 また、全ト協がこのほどまとめた「令和5年中の交通事故統計分析結果」によると、2023年に事業用トラックが第1当事者となった交通事故について、死亡・重傷事故の合計は前年より103件増加の1062件、死者数・重傷者数の合計は前年より113人増加の1137人となった。

 さらに、飲酒運転人身事故件数は、2022年の6件から17件増えて23件となった。前年比で約4倍の急増だ。

 これは、全ト協の「トラック事業における総合安全プラン2025」の数値目標である、「死者数・重傷者数合計970人」および「飲酒運転人身事故件数ゼロ」を大きく上回るものであり、危機的な状況にある。

 このため全ト協は、以下の3点について都道府県トラック協会及び傘下の会員事業者に周知徹底を求めた。

1.改正改善基準告示など労働関係法令の遵守
2.最高・規制速度など道路交通法等関係法令の遵守および指導の徹底
3.アルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認など点呼実施体制の確立

 また、「絶対に『交通事故』を起こさない!!」と題して機関紙「広報トラック」の号外を発行して安全対策徹底を呼び掛けている。

「プラン2025」達成は絶望的?

全ト協の「総合安全プラン2025」目標値と交通事故統計の乖離が大きくなっている

 言うまでもなく、飲酒運転は決して許されない犯罪だ。全ト協は飲酒運転を反社会的行為と位置づけ、トラック運送業から根絶することを目指している。それにもかかわらず2023年には飲酒運転人身事故が急増した。23件という件数は、「プラン2025」のスタート以来最悪の数値だ。

 死亡・重傷事故の合計件数も、下げ止まりどころか増加に転じており、目標値には程遠い。事業用トラック1万台当たりの死者数と重傷者数の合計は8.6人で、こちらも目標である「6.5人」とは大きな開きがある。プラン2025の数値目標達成はかなり困難な状況になっている。

(なお、2020年度を目標年度とする「プラン2020」も目標未達であった)

 コロナ禍では、物流を担い産業活動や国民生活を支えるトラックドライバーが「エッセンシャルワーカー」として注目されたが、「物流の2024年問題」に代表されるように、トラック運送業は深刻な人手不足に陥っている。

 担い手不足で人材を選べる状況ではないとはいえ、重大事故や飲酒運転の急増は、「プロドライバー」に対する社会の信頼を崩壊させる。本来ハンドルを握るべきではない人物は業界から排除しなければならない。関係者は事故防止に向けてより一層真剣に取り組む必要がある。

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