クルマの写真を撮るとき、「できればホイールのセンターキャップをそろえたい」と思ったことはないだろうか。「ジャッキがないとなあ」なんて思うなかれ。現場のプロは、こうしてセンターキャップをそろえちゃうのよ!
文:ベストカーWeb編集部/写真:小林岳夫、Adobestock、ベストカーWeb編集部
■前後のタイヤの回転差を使う
クルマの写真を撮るのが趣味って人は少なくないと思うが、几帳面な人は「ホイールのセンターキャップの位置をそろえたい」と考えるはず。ぱっと見「ジャッキであげなきゃ無理」と思うかもしれないが、実はそんな手間は必要ない。
仕事でクルマの写真を撮る自動車カメラマンやクルマメディア編集者の中には、ハンドルを切ってちょっとクルマを前後させるだけで、ホイールキャップの位置をピタリと合わせてしまう達人がいる。脇で見ているとまるで魔法だ。
今回は特別に、その魔法を解説しよう。「いや別に魔法じゃないっすけどw」と照れながら教えてくれたのは、ベストカーWebがいつもお世話になっている自動車フォトグラファーの小林岳夫さんだ。
岳夫さんによれば、旋回時に生じる前後輪の回転差を利用しているのだという。クルマのハンドルを目いっぱい切って前進させると、前のタイヤは円弧を描いて進むのに、後ろのタイヤはあまり動かないことに気付くはず。これを利用してマークを合わせるのだ。
たとえばクルマの左側、前輪のセンターキャップが時計の14時の向き(車両後ろ側に傾いている)にあり、リアのセンターキャップがぴったり上を向いているとする。だとしたら上記のようにハンドルを切ってゆっくりと前進すれば、前輪のほうが多く回転してセンターキャップが後輪とそろうというわけだ。
実際には後輪もわずかに動くから、前後のマークをそろえると真上を過ぎているはず。その場合はハンドルを直進に戻してバックすればいい。最初は友人などにホイールの回転を横から見てもらい、二人で作業すれば確実だろう。
原理は変わらないが、もし左側前輪のセンターキャップが10時の向き(車体前方に傾いている)の場合は、最初にハンドルをめいっぱい切ってゆっくりバックしたほうが早い。前輪のマークが後輪のマークとそろったら、ハンドルを直進に戻して前進すればOKだ。
■さらにプロは光の向きも気にする!
ということで、魔法の仕組みがお分かりいただけただろうか。慣れた人はこれを一人だけで、ときどき窓からタイヤを確認しながらちょいちょいとやってしまうのだから本当にすごい。
しかし実をいうとこれだけじゃプロとは言えない。クルマの写真は大抵屋外で撮るから、背景や太陽の向きなどを考えてクルマの向きを決める。ハンドルを切ってクルマを動かすだけでは、大抵クルマの向きが理想とはズレてしまうのだ。
そこでプロはあらかじめ理想の向きを決めたら、ハンドルを「右」「左」と両方に同じ量だけ切って前進し(またはバックして)、センターキャップを合わせる。これなら蛇行はするが、結果的にクルマの向きが変わらないためだ。
そして小林岳夫カメラマンから、注意も授かった。「作業は許可を得た安全な場所でやること。さらにタイヤの据え切りはホイールのアライメントやパワステなどに負荷をかけるので、デリケートな旧車などは、素直にジャッキであげたほうがいい」とのことだ。
センターキャップをビシッとそろえて、愛車の写真がもっと素敵なものになることを祈る!
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