連日報道されているトヨタ・ホンダ・マツダ・スズキなどの不正問題。なかでもユーザーが気にしているのが「エアバッグのタイマー点火問題」である。万一の時のことを考えると、不安になるのも納得で、いくら安全性の問題なしと言われても……と思っている人も多いハズ。その不安解消します。そもそもなにが問題で、どういうことなのか!? をわかりやすくお届け!!!

文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部

■ユーザーの不利益はなし!! 一連の騒動とダイハツ問題はそもそも別モノ

 認証不正発覚後、ベストカーWebで「不正」と認定された内容についての解説をしてきたけれど、多くの人から「安全性を考えたら一番やっちゃダメでしょ!」と思われているのは、エアバッグのタイマー点火のようだ。私はトヨタの説明を聞いて「問題ない」と判断したのだけれど、皆さんエアバッグについて知らないらしく理解できていない。しっかり説明する。

 衝撃センサーが一定以上のGを検出した際、エアバッグが展開するかどうかについて言えば、すでに30年前に決着している。エアバッグの基本技術、戦闘機の非常脱出シートと同じ。99.99%以上の確度を持つ。したがって専用のシステムと配線を使うことで展開しないということは事実上無い(世の中に100%は存在しない考える)。問題となってくるのは展開タイミング。

 ダイハツの不正は開発途中のクルマであり、展開タイミングさえ決まっていない時点で試験を行なっている。当然ながら衝撃感知センサーとの連携も出来ておらず、タイマーで展開させないといかんともしがたかった。ちなみに市販モデルでは適切なタイミングで展開することが確認されたため、認証取り消しになっていない。悪質ながら、ユーザーへの不利益はなかった。

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■アイシスはマイチェンでシートベルト変更!! それがそもそもの発端も問題なし

今思えばかなりのロングセラーであったアイシス。マイチェンでシートベルトの変更を行ったのがそもそもの発端のようだ

 今回指摘されたトヨタのタイマー展開を調べてみた。対象車種はアイシスとクラウンの2車種。アイシスから。クルマそのものの認証に使う試験はフルラップ衝突50km/h。オフセット衝突56km/hという国交省の指定通り行われ、余裕で規定値をクリア出来ている。さらにJNCAP用のフルラップ55km/h。オフセット64km/hという、国交省の認証より大幅に厳しい試験も行い、クリア。

 問題になったのはマイナーチェンジモデルだ。シートベルトの設計変更を行ったそうな。マイナーチェンジの認証を取るため、新しいシートベルトで試験をする。その際、シートベルトの性能をチェックすべく、エアバッグの展開タイミングをタイマー使い適切なタイミングより遅らせた。エアバックの正式名称は『SRSエアバッグ』で、SRSとは補助的という意味。

 衝突時の衝撃は基本的に車体構造とシートベルトで受け止め、エアバッグを補助として使う。だからこそエアバッグだけじゃ危険なのだ。アイシスはエアバッグの効果を落として衝突試験行い新しいシートベルトの性能をチェック。国交省の基準をクリアしただけでなく、JNCAPの厳しい基準も満たしている。その時の数値を認証で使ったため「不正」と判定された。

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■クラウンまさかの4WDモデルだけ不正認定…構造一緒なのだから無問題な気も

対象となったのはクラウンの210系、しかも4WD仕様のみ

 クラウンの場合、さらに興味深い。不正認定されたのは4WDモデル。2WDモデルについていえば正規の認証試験を行いクリア済。厳しいJNCAPの試験も余裕でクリア出来ていた。本来、4WDもキャビン構造が同じのため、2WDのデータを使い認証に使って問題なし。ところが4WDの認証データとして、認証試験でなく開発試験のために使ったデータを記載した。

 開発試験はデータ取りのため条件を同じにすべく、タイマーを使い2WDと全く同じ展開タイミングにした。このデータ、本来なら開発試験なので使わない。なのに認証用のデータとして提出している。なぜ2WD用のデータを記載しなかったのか? 10年前のことなので解らないと言う。そういった書類が残っていたので不正という扱いにしたようだ。国交省側にも説明済みとのこと。

 ちなみに2WDのデータは前述の通り国交省の指定速度の衝突試験をクリアしている上、一段と厳しいJNCAPも余裕。これまた市販車の安全性に問題ないと考えていい。いずれにしろ認証に必要な国交省の試験内容はアイシスもクラウンもクリア出来ている。特にクラウンの4WDについては国交省に不正案件として提出する必要も無かったんじゃないかと考えます。

 世界の流れを見ると、自動車は基幹産業。アメリカ、ドイツ、フランス、韓国、中国いずれも国を挙げてバックアップしている。日本も自動車産業無ければ赤字国になってしまう。なのに政府もメディアも自動車産業の足を引っ張ることに腐心している。このままだと自動車産業も衰退しかねない。忖度する必要などないが、いがみあうことも建設的じゃないと考える。

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