『マッドマックス』と言われて、最初に思い出すのは真黒のパトカー「インターセプター」だろう。大好評公開中の最新作『マッドマックス:フュリオサ』も期待を裏切らない様々な改造車が登場するが、キーとなるのは要塞化されたトラック「ウォー・タンク」だ!! 心を鷲掴みにされること間違いなしの物語をご紹介しよう!!
文/渡辺麻紀
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■「ガソリン」を奪い合うハード&リアルなボトルアクション
『ブレードランナー』(1982)と並び、近未来SF映画の方向性を定めたもう1本といえばジョージ・ミラーの『マッドマックス』(1979)。核戦争ののち文明は後退し、砂漠と化した大地でエネルギーであるガソリンを奪い合う人間たちの姿をハード&リアルなアクション満載で描いた作品だ。
ミラーの長編デビュー作でもあった『マッドマックス』は世界中でスマッシュヒット。かくてミラーは続編の『マッドマックス2』を1981年に作り、こちらは大ヒット。3作目の『マッドマックス/サンダ―ドーム』(1985)へとつなげた。
多くの人はこれでピリオドと思っていたものの、ミラーにはまだ構想があった。それが3作目から実に30年も経って製作された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)だ。これはその年のアカデミー賞でも作品賞をはじめ10部門でノミネートされ6部門で受賞という、この手のアクション映画では珍しい快挙を挙げてくれた。
そして、それからまた9年を経て公開されるのが今回ご紹介する『マッドマックス:フュリオサ』。『怒りのデス・ロード』でシャーリーズ・セロンが演じていた片腕&バズカットの女性戦士フュリオサの若かりし頃を描いたシリーズ最新作だ。
主人公が代わったとはいえ、舞台はいつも通りの荒廃した砂漠地帯。シリーズすべてに共通しているもうひとつの要素、“改造車”ももちろん健在だ。
■ジョージ・ミラー監督曰く「車両はキャラクターを表している」
映画には車が印象的に使われている作品が多いとはいえ、本シリーズのように凄まじいまでの改造車ばかりが登場するのはまずない。
1作目と2作目に登場したマックス(メル・ギブソン)の愛車、黒塗りのパトカー、V8インターセプターが登場したときから、『マッドマックス』シリーズを愛でるファンのなかには、この改造車に着目している人も多いだろう。
というわけで本作の改造車をチェックしてみよう。
そのまえに記しておきたいのはジョージ・ミラーの言葉「車両はキャラクターを表している」。つまり、そういう人間だから、こういう車になっているということであり、彼らが成長すればその車も変化する。キャラクターと車両を連動させているところが面白い。
そこで今回、強烈な印象を残すのが、主人公フュリオサの宿敵となるバイク集団のボス、ディメンタス将軍。マーベルの『ソー』シリーズで知られるクリス・ヘムズワースが、今回はヴィランに挑戦している。
なにせ、自らを「将軍」と言ってしまうような男である。背中にはパラシュートの布で作ったようなマントを着けている仰々しいヤツだけあって、その車もドラマチック。最初に乗っている“チャリオット”と名付けられた車は『ベン・ハー』に出てくる、まるで戦闘用馬車。
両脇と中央に配置されたバイクは3頭の馬のようで、ディメンタス将軍が乗る戦車を牽引している。中央のバイクには、ミラーの地元でありロケ現場でもあったオーストラリアの航空機製品製造、ロテック社の航空機エンジンを横向きにして搭載。
両側のバイクはBMWのR18 をカスタマイズして作られた。これを駆るときのディメンタスの誇らしげな表情はまさにぴったりだ。
■シリーズを象徴するモンスタートラックも登場
最初はバイク集団のボスだったディメンタスも後半になると権力を手に入れ、よりパワーアップ。愛車もそれに伴ってパワーアップし、巨大すぎるタイヤが6輪も並ぶモンスタートラックに乗り換える。このベースになっているのはアメリカのトラックメーカー、マックのマックDM800。
エンジンはシボレーの454のビッグブロックエンジンを搭載していて、どんな場所でもオフロード走行が出来ると言う、まさにモンスター級のパワーをもつ車だ。
一方、主人公のフュリオサが最初に乗るのは、バリアントと名付けられたクライスラーのスラント6エンジン搭載の車両。ボディのベースとなっているのは、おそらく同社のプリムス・バリアント。
ちなみに、フュリオサ役のアニャ・テイラー=ジョイは本作に出演するまで車の免許がなかったようで、この車でドライビングのトレーニングをしたという。
フュリオサが最後に乗るのはクランキー・ブラックと呼ばれる改造車。こちらのベースになっているのは1932年型フォード5ドアクーペのようにも見えるが、エンジンはターボ給気式V8エンジンを使い砂漠での走行も自由自在にしている。クラシカルなルックスが、フュリオサによく似合っている。
■度肝を抜く迫力のウォー・タンク
そういう車のなかで度肝を抜くのは水を運ぶ巨大なウォー・タンク。シルバーの光沢のあるステンレススチールとクローム仕様。そこには、その持ち主である砂漠の王者、イモータン・ジョーの伝説の物語が浮き彫りにされている。
こちらのベースになっているのはアメリカの貨物自動車メーカー、ケンワースの900シリーズ。あの『トランザム7000』(1977)にも登場していた車種と同じだ。
このほかにもフォルクスワーゲン・ビートルとオートバイを合体させた車両や、後輪をスノーモービルのトラックに換えたバイクも登場し、その数、何と145台。車型が35台、バイク型は110台にものぼる。
もちろん、一台もオリジナルままの車両はなく、すべてがカスタマイズしたもの。それだけでも凄いのに、それらが全部、砂漠をめちゃくちゃパワフルに走り回るのだから車やバイク・ファンにはたまらない!
そういう点でも『マッドマックス』シリーズは大コーフン出来る、滅多にお目にかかれないカー・ムービーなのである。
■『マッドマックス:フュリオサ』(Furiosa: A Mad MAX Saga)
世界崩壊から45年。唯一残る”緑の地“で幸せに暮らしていた少女フュリオサは、ディメンタス将軍率いるバイク集団に誘拐される。ディメンタスは砂漠を牛耳るイモータン・ジョーにとって代わる野望を抱いていた。そんななか、故郷へと帰ろうとするフュリオサの運命は?
ジョージ・ミラーはERで働く医師だったが、映画への夢断ち難く、その仕事で蓄えたお金を投入して『マッドマックス』を撮った。本人曰く「撮影中、自分が何をしているのかもよく判らなかったんだが、どうにか1本の映画になっていた」。
が、その作品はまさに彼のライフワークとなり、これまで5本すべてを自らの脚本とメガホンで撮ることになった。
前作の『怒りのデス・ロード』はオーストラリアの豪雨のせいでアフリカのナミビアで撮影したが、今回はミラーの故郷、オーストラリア。クリス・ヘムズワースも同国出身であり、そのほかのクルー&スタッフの多くもオーストラリア人。
やはり、彼らにとって『マッドマックス』シリーズはスペシャルなようで、ヘムズワースは「僕の子ども時代はほぼ『クロコダイル・ダンディー』と『マッドマックス』だった。父がバイクのレースをやっていたので『マックス』はより近い存在だったといえる。そういう作品にいまは自分が出演している。こんな最高なことはない!」とコメント。
考えてみれば、オーストラリアに映画ファンの注目が集まったのは『マッドマックス』が公開されてから。ミラーはもちろん、同国出身のメル・ギブソンもハリウッドで活躍するようになった。オーストラリアのエンタテインメントをワールドワイドに広めた記念すべきシリーズでもあるのだ。
『マッドマックス:フュリオサ』
「大ヒット上映中!日本語吹替版同時上映 IMAX (R) /4D/Dolby Cinema (R) /SCREENX
(C) 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation.
Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories.
監督/脚本/製作:ジョージ・ミラー
出演/アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース、トム・バーク、アリーラ・ブラウン
前作の3枚組ブルーレイセットも発売中だ。ファンならばマストバイアイテムだ。
【初回限定生産】マッドマックス 怒りのデス・ロード コレクターズ・エディション「4K ULTRA HD&ブルーレイセット」(3枚組/豪華封入特典付)5/24発売 8580円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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