クルマを所有する以上、定期的なメンテナンスや修理は避けて通れないもの。そんなとき、頼りにするのが整備工場だ。しかし、一口に自動車整備工場といってもその実、大きく分けて2種類の工場が存在する。今回はそんな自動車整備工場の決定的な違いを解説していこう。
文:佐々木 亘/写真:Adobe Stock(トップ画像=เลิศลักษณ์ ทิพชัย@Adobe Stock)
■認証と指定の間にある大きな差
整備工場には「認証整備工場」と「指定整備工場」があります。
認証整備工場は、地域の運輸局から認証を受けた整備工場で、一定の基準を満たした設備と技術者を備えている整備工場です。認証整備工場では、エンジンの調整やブレーキの点検など、基本的な整備や修理を行うことができます。
一方、指定整備工場は、運輸局から指定を受けた整備工場で、認証整備工場よりも厳しい基準をクリアしています。認証整備工場では完結できない車検も、指定整備工場なら整備から検査まで、お手の物。
ここまで聞くと、それなら全部の整備工場が指定整備工場になった方が良いのにと思いませんか。なぜ認証整備工場と指定整備工場の2種類が存在するのか。その謎を解き明かすためには、指定整備工場になるための関門を、知っておく必要があるでしょう。
■マジ厳しいぞ! 指定を取るために歩むべき道
認証整備工場が指定整備工場になるための手順は、次の通りです。
まずは、工場の所在地を管轄する運輸支局に申請書を提出することからはじまります。その後、提出された書類を基に審査が行われ、設備や作業環境の現地調査を行い、審査に合格すると、指定を受けることができるのです。
こうして並べるだけだと簡単な申請に見えますが、晴れて指定整備工場になるためには、様々な条件をクリアしなければなりません。
作業場の面積や設備はもちろん、車両置き場や検査員の数(2名以上の有資格整備士が必要)、車検持ち込み実績(直近2ヶ月30台以上)など、基準は細かく積み上げも難しいものばかり。
さらに、指定整備工場になるためには高額な設備投資が必要であり、その設備維持費も高くなるため、小さな町工場では実現が難しいのが現実です。また、都市部や狭い場所にある工場では物理的なスペース確保が難しく、指定整備工場になりたくても条件が合わず断念するしかありません。
追い打ちをかけるように、近年では整備士の減少。有資格整備士の確保もできなくなっています。
これらの理由から、今残る認証工場の中には、指定整備工場の指定を取れない(取らない)ところも多いのです。
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■馴染みの整備工場は「指定」を選ばないとダメなのか
最近では、指定整備工場だけでなく、認証整備工場でも高度な設備や診断機の導入、技術者のスキルアップなど最新のクルマにも対応できるところも増加しています。
ただ、クルマのコンピューター化やOBD検査などが進むにつれ、認証整備工場では整備を依頼できる範囲が狭くなることも想定しておかなければなりません。
賢い利用法は、必要な時に必要な場所を使い分けること。ニーズに応じて選択することが重要です。
例えば、指定整備工場は、車検を一貫して行うことができるため、車検時の利便性は非常に高いです。半面、多くの整備工場が予約制をとっており、飛び込みでの整備が難しくなります。
対して、急なお願いに対応してくれやすいのは認証整備工場でしょう。一般的な整備や修理、ちょっとした「困りごとの相談」ができる場所として、頼もしい存在です。
筆者のおすすめは、比較的軽い作業をいつでも任せられる「ツーカー」な認証整備工場を持っておくことになります。軸足は認証整備工場に置いた上で、車検を任せられる指定整備工場を、自宅近くで見つけておくといいでしょう。
自動車整備は待ってくれないことも。そのため、指定整備工場だけでなく、認証整備工場を上手く活用することが、整備難民にならないためのポイントです。
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