2021年に幕を下ろしたアリオン。兄弟車のプレミオに比べて少しターゲットが若いため、見劣りする部分もあるのだが、若さに振ったアリオンだからこそ、あの爆売れプリウスの代わりを務めることができていた。今回は、アリオンというクルマに隠されていた魅力を、販売目線でお伝えしていきたい。

文:佐々木 亘/写真:トヨタ

■プリウス買うならアリオンで十分! HEVと純ガソリンの価格差を取り戻せ

 当時、プリウスのSグレードが232万円で売っていた時代だ。この時アリオンのA15Gパッケージは180万円で、その差は52万円。現在のHEVと純ガソリンの価格差以上の差があった

 筆者がトヨタ店で営業マンをやっていた当時、アリオンを売りに売りまくっていた。そのころは30系プリウスの全盛期で、周りの営業マンからは「どうしてアリオンばかり売れる?」と、疑問を持たれるほどである。

 というほど、筆者にとっては得意車種とも言うべきクルマだったアリオン。扱っていたのは2代目モデル。1度目のマイナーチェンジを終えたころのモデルだ。

 当時、アリオンを強く勧めていた対象は、プリウスを買いにやってきて、商談が上手く進まなくなったユーザーだった。仕上がりの見積額が、予算とどうにも合わないのである。

 クルマの使い方を聞くと、土日に買い物やレジャーに行くくらいで、年間走行距離は5,000km程度。こうなった時が、アリオンの出番だ。

 プリウスのSを検討している人にはアリオンのA15 Gパッケージを、プリウスで最上級のGを求めた人にはアリオンのA18 Sパッケージを勧めていた。

 当時、プリウスのSグレードが232万円で売っていた時代だ。この時アリオンのA15Gパッケージは180万円で、その差は52万円。現在のHEVと純ガソリンの価格差以上の差がある。

 これで、予算オーバーだった見積書は大きく変わることに。「5ナンバーセダンで排気量も小さいけど大丈夫か」という人は、アリオンに試乗させるだけで、すぐに納得させることができた。

■セダンは使いにくい? アリオンはライフスタイルにピッタリのクルマに大変身!

 車室内の質感は、プリウスよりもアリオンの方が圧倒的に上だ。中間グレード同士で比べると、メッキパーツやウッド調のインパネなどを上手く使い、上質な仕上がりになっている。

 当時は、プリウスのエレクトロシフトマチックに抵抗感のある人が多く、アリオンのゲート式フロアシフトはお馴染み感があって好印象だった。

 さらに、室内空間はプリウスよりもアリオンの方が広く感じる。特に後席の座り心地や足元空間は、アリオンの方が良い。

 また、プリウスでできるハッチバック的な使い方も、アリオンならダブルフォールディングリアシートが解決してくれる。ただのトランクスルーではなく、クッションを引き起こすことによって、広大かつフラットなラゲッジルームを作れるのが、アリオンの魅力だ。

 こうなると燃費以外の面で、プリウスを選ぶ理由は無くなってくる。50万円以上の価格差を燃料代で埋めるためには、プリウスで20万キロ以上走らなければならない。年間走行距離が5,000kmのユーザーには、40年後に到達する遠い目標だ。

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■トヨタの間口を広げた存在

アリオンのような「地味だけどイイ」クルマの開発を、これからもよろしくお願いします

 アリオンは売りやすく、買いやすい、魔法のようなクルマだった。ベーシックな内外装は乗り手を選ばず、幅広い年代・家族形態にフィットする。

 現在は、カローラがアリオンの後継車となっているわけだが、アリオンの持っていた不思議な高貴さが、カローラには感じられない。

 特別な特徴は無いが、不思議と売れるというクルマを最近は見なくなった。こういう万能車が出せるのも、余裕のあるトヨタだからこそ。トヨタさん、アリオンのような「地味だけどイイ」クルマの開発を、これからもよろしくお願いします。

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